第14話
「さて、君たちスパイにとって入学式なんてものはまだるっこい、出る必要もない催しだと思われがちだ。しかしいつなんときであれ、スパイたるもの耐え忍ぶことは必要不可欠。ゆえに、私はこれより眠くなるようなスピーチを始める。えー……」
眠くなるようなと自ら主張した梅宮のスピーチは、催眠術かと思わせるほどに眠気を誘った。間延びした喋り方で、どこかで聞いたような内容ばかりが次々と飛び出してくる。梅宮のスピーチがついに切磋琢磨の語源にまで遡ろうとしたそのとき、席を立って叫び出したのは百足だった。
「もう無理だ!」
「どうした、百足くん。スパイともあろう者がこの程度の我慢ができないなど──」
「違う! こいつだ! この……このっ」
百足は隣に着席している「カラスに荒らされたあとのゴミ袋」を指差すも、彼(?)を呼称する的確な表現が浮かばず言葉に詰まっているようだった。
「カラスに荒らされたあとのゴミ袋のようなやつ! 臭すぎる!」
やはりその表現に落ち着くよな。僕だけじゃなくてホッとした。
「カラスに荒らされたあとのゴミ袋とは、失礼な」
ゴミ袋から、やけに甲高い男の声が聞こえてきた。しかしやはりゴミ袋をかぶっているせいだろう。声がこもっている。
「礼を欠いているのは貴様だろう! なんだこの悪臭は!」
「悪臭……? はぁ、このかぐわしい香りが、悪臭とは……ふしゅっしゅっしゅ」
独特の笑い方が、体育館に響き渡る。
「くそっ、おい!」
百足が手を挙げると、彼の部隊の一人が颯爽と現れゴミ袋に手をかけた。
そしてその手によってゴミ袋が開かれる。すると、そこには……
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