第4話
結論から言うと、新入生の数は少なくとも百を超えていた。
眠子と並んで座ってからまもなくして、職員らしきおばさんに声をかけられた。なんでも、式の準備がまだ終わっていないため、外で20分ほど待機していてほしいとのことだった。例の暴発事故の処理もしてくれるというので眠子は有り難がったが、僕は入り口のバリアフリー精神のなさについて考えていた。
そのことについて尋ねると、正面ではなく裏口側ならスロープがあるというので、僕は眠子とともに一度外へ出たのだった。
そして頃合いを見計らって中へ入ってみると……びっしりと並んだパイプ椅子には、すでに数十人の生徒たちが座っているのだった。
どういうことだ?
十三人というのが嘘だったのだろうか。さすがに少なすぎるとは思っていたが、そんなにすぐバレる嘘を吐く必要性が梅宮にはないだろうことも確かだ。
少し頭が混乱してきた。手頃な椅子に腰掛け、左右を見回してみる。
予想を裏切ったのは数だけではなく、質についても同じみたいだ。いかんせん、最初に会った新入生が眠子だったということもあり、ヤバい奴らが集まってくると考えていたのだが……見渡す限り、ぱっと見ではみんな普通の高校生としか思えない。
むしろ、バットを持つ僕は明らかに浮いていた。完全にビジターの空気だ。
そわそわしながら座して待っていると、司会らしき若い男が壇上に現れた。
「新入生のみなさん、ご入学おめでとうございます。これより入学式を執り行います。早速ですが、まずは校長先生にお話を伺うところからはじめるとしましょう。では、校長先生、お願いします」
随分とフランクな挨拶だった。かすかに場内の空気が和んでいることがわかる。しかし、校長先生の挨拶って……まあ、そりゃそうか。あの強面で明らかにカタギの人間ではない梅宮が壇上で話すところなど、想像もできないけど。新入生の反応もしかり。
だが、ややあって壇上に現れたのは、梅宮ではなかった。もう定年間際だろう白髪のおじいちゃんだ。いったい、何が起こっているんだ……?
一度状況を整理しよう。
ここは梅宮が創立したスパイ養成学校である。梅宮は校長である。梅宮はその権力を利用し、アリサさんという巨乳の新任教員などにハレンチなことをしている。いいなあ。
校長室の隣には隠し部屋があり、法律に引っかかりそうな武器類が大量に置いてある。梅宮によれば、僕を含め十三人のスパイ候補生が入学している。そのうちの一人はおそらく九文字眠子で、重装機関な車椅子を操る。しかし入学式には十三人を明らかに上回る新入生がいる。入学式で校長として登壇したのは梅宮ではない。
そして、体育館で機関銃をぶっ放したのにもかかわらず何も問題が起こっていないことを考えれば、少なくとも式の準備にあたった職員は、ここが尋常ならざる学校であることを理解している。
最後に、僕たちに話しかけてきた職員のおばさんが梅宮の魔の手に掛かっているかどうかは不明だ。いずれにせよ、おっぱいはアリサさんのほうが大きいことは間違いない。
こんなところかな。落ち着いて考えたことで、現状に対する分析はかなり進んだといえる。そのかわり、校長先生の挨拶はまったく耳に入っていなかった。しかし、疑問はほとんどが解消した。
つまり、こういうことなんだろう。
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