第5話 COOL&HOT!!
私の名前は月島楓。
少女達を護衛する天使だ。
馬の足音。馬車の音だ。
地獄の道に太陽が落ちる。
夜が来た。
さっきまで灼熱の風が嘘みたいに冷たい風が吹く。
私が今着てる薄手のワンピースじゃ寒い。毛布でも買ってくれば良かった。
私は馬車の中の少女達に寒くないかと聞く。
「寒いですぅ〜」
私も寒い。
寒すぎるくらいの寒さだ。
こうなれば砂漠にある休憩所オアシスに行かないと危険だ、深夜になればもっと寒くなりマイナス何10度にもなる。
こうなると寒いなんてもんじゃなくなる。
だから休憩のためにこの道にはオアシスと呼ばれる温泉が湧いている所が300程存在する。
さっきから遠くで見えている湯気が立っている所に向かう。
多分そこにあるはずだオアシスが。
馬に鞭を打ちを加速させる。
「もう少ししたらオアシスで休憩するから安心しなさいよ」
「は、はい。わかりました」
震えた声で少女は答える。
戦士も痛さには耐えれても寒さには弱いようだ。
オアシスが見えて来た
目印であるヤシの木が見える。温泉が湧いている地帯だからなのかオアシスに着く前から暖かい。
「もう着くわ」
「何かあったかいです」
「凍ってた体が溶けるみたい」
相当寒かったようだ。
天使の私はそうでもなかった。人と天使の感覚のズレを気にしてないといけなさそうだ。
でももう平気だ着いたからな。
オアシスに馬車を止め馬も休ませる。
「カゴの中から降りてきたいいわよ」
疲れた様子でオアシスの地に足を着ける少女達。
それを見て私は人間は座ってるだけで疲れるのか、と思った。
「温泉よ」
少女達にあったかそうな温泉を見せる。
……見た目3、40度ありそうだが人間には熱いのだろうか?
「わあ、お風呂だ!」
「汗でもうベトベト」
喜んでいるからまあ大丈夫か。
私も昼の砂漠の太陽に灼かれて汗臭くなっていた。
ワンピースと下着を脱いで温泉に足をつけてみる。
天使の私にはぬるく感じられた。38度程のぬるま湯だ。
少女達も裸になり温泉に飛び込む。
少女達は悲痛な表情を浮かべる。
人間には熱いのか!?
「痛い」
「傷が、しみますよー!」
何だ、お湯が傷にしみただけか。
「適温か? 戦士諸君」
「はい、少し熱いですが我慢できますです」
少女は痛そうだが笑みを浮かべそういった。
しかしこんなぬるま湯で熱いのか……人間は大変だな。
特にこの少女達は大変そうだ、前世の傷を魂が覚えているのか身体中、古傷だらけだ。
「戦士諸君、その傷、治したくないか?」
「どの傷ですか?」
「その古傷だ。女の傷はいたいたしいわよ」
「ああ、たしかに傷がつくってことは弱いって事ですもんね、よく戦闘の訓練をしてくれた人に言われました」
……まあ言いたいことはそういう事じゃないんだが。
「まああんた達の傷に対する価値観は知らないけど、それ治したくない?」
「治るんなら治したいです」
「じゃあ治したげる」
私はワンピースのポッケに手を伸ばして薬瓶をとる。
「これはポーションという薬で魂に出来た傷が治るものよ」
「へぇ……」
「これを大さじ1杯ほど温泉に入れる」
「温泉に入れるのはまずいんじゃ」
「
ポーションをぬるり、と垂らす。
ポーションの科学的なニオイが鼻につく。
少女達はその様子を疑問の表情で見ている。
「良いニオイでしょ、科学的で」
「は、はい……」
苦笑いを浮かべる少女達。
このニオイは天使の間でも嫌う人が多い。
でも私はこのニオイが好きだ。
少女達は自分の古傷を見てみる。
古傷が肌に押し出されて埋まっていく。
「わあ!」
今日ついた傷もふさがっていく。
「魔法みたい!」
「魔法じゃないわ、この世界の科学薬品よ」
「へえ! 凄いんですね!」
喋ってたら……喉乾いた。
「戦士のだれか、馬車まで行って水、取ってきて」
「はい」
と少女の1人が馬車に取りに行く。
馬車はここから20メートル程離れた所に停車してある。
少女は寒そうに両肩に手を添えて馬車のカゴに入って行く。
ザッ、ザッ。
何処かから足音がする。
音からして男1人だ。
おかしい。普通、この道を通る時は罪人もビジネスマンもみんな馬を使うはずだ。
何故だ? 何故男1人?
護衛人としてこの疑問は見逃す事は出来ない。
ちゃぷ、と温泉から出る。
「人に水を取りに行かせたのにもう上がるんですか?」
少女は少し冗談っぽい口調で言ってくる。
「戦士諸君、あまり音を出さずにそこにいろ」
そう言って馬車のカゴに入る。
「あ、ツキシマさん」
「静かにして、よく分からないモノがこっちに来てる。ショットガンに弾込めて渡して」
「あ、さっき移動中に私達暇だったんでいつでも撃てる状態にしてありますよ」
準備の良い奴らだ。
ショットガンを受け取る。
「ポンプアクション式で12発装填してます」
「見りゃ分かる、そこで隠れてなさい。出てこないようにね」
「私はそれに似た様なのに撃たれた事がありますけど死ぬほど痛いです。肋骨が折れました」
「分かった」
私達が来た方向からの歩く音。
距離は正確には測れないが4、500メートルくらい離れた所からする。
……少数だがこの道に住む者がいる。地獄に行かずあえて地獄よりも厳しいここで暮らす修行僧の様な者とかだ。
その様な者なのかも知れない。
オアシスを見かけたので温泉に浸かろうとしている者かも知れない。
歩き方に殺気がない。
恐らくそういう者だろう、が。
少女達を狙う敵ではないとも限らない。
危険の可能性は潰すまで。
少女を温泉から上がらせて馬車のカゴに乗ってもらう。
少女達は不安な面持ちだ。
「どうするんですか?」
少女達は聞く。
「来るやつがあんた達に何の反応も無かったらこのまま明日の朝までここで寝る。来るやつに反応があって敵ならショットガンで無力化して仲間がいないか聴きだして拘束、それで朝になり次第ショットガンを気絶するまで撃ち拘束を解く」
私は質問に答えると少女達はもっと不安げな顔をした。
「なにか不満でもあるのか?」
「どうやって反応があるか調べるのですか?」
「あんた達に手伝って貰うわ」
少女2人は馬車の横で横になっていた。
私の指示で寝た振りをしているのだ。
私は馬車の中から残り少女3人と馬車のカゴでショットガンを装備し待機していた。
もし来るやつが敵で寝込みの少女2人を襲おうとすれば私が飛び出し敵を無力化させようという算段だ。
「大丈夫ですよね? この作戦?」
「大丈夫だ。安心しろ1人の男が3人のショットガン持ちを相手に勝てる訳ないし、それに寝たふりしてる2人にもショットガンを渡してある」
「えーっと、敵を殺しちゃダメなんですよね?」
「ああ、作戦を話した時に何度も言ったがダメだ殺すと私の任務は失敗し私は上司に怒鳴られる」
ザッザッ。
音が近づいて来た。
「この足音ですか?」
「そうよ……良い? 敵なら撃つのよ」
「分かってます」
窓から外を覗く。もうすぐ見えるはずだ。
見えた。
30メートル程離れた所だ。
それは金髪のアメリカ人だった。服は「ジャッカルの日」と日本語で書かれたTシャツ、下は高そうなジーンズ。そして腰に奇妙な形のベルトを締めていた。ベルトの横を見ると日本刀が刺してあった。
そいつの格好を見ると私はカゴを飛び出しそいつの方に走る。
「馬車に入れ!」
寝たふりをしている2人に叫び、敵と判断したそいつにショットガンを放つ。
バシュ、と敵に弾が当たる。
が、敵は特に痛くなさそうだ。
「不良品かしら、コレ」
「何か分からんが貴様は何だ?」
疑問に満ちた顔で敵は腰にかけた刀を抜く。
良く手入れされた日本刀だ。
「あんたあれでしょ、爆死したりした奴でしょ?」
一応聞いて見る。
テロに巻き込まれて復讐しようとしている奴なのかを。
それを聞いて敵はさっきまでの顔が嘘みたいに鬼の形相となる。
やっぱり敵だ、間違いない。
「貴様はそれと関係があるのか?」
「あら、追って来たんじゃないのテロを」
「いるのか? 犯人は? この道にまだいるのか!!?」
知らなかった様だ。
だがこの反応、どっちみち敵だ。
「いるよ、でも、会わせない」
「邪魔だてするか貴様」
「それが仕事だからね」
アメリカ人サムライは日本刀構える。
「なら今日で殉職だ」
続く。
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