一章 きみと出会って変わったこと

きみと出会って変わったこと (1)


 得体の知れない何かに追いかけられる経験というのはあるだろうか。

 俺はある。今がそうだ。

 得体の知れない何かといっても、その外見は人間と変わらない。目も耳も鼻も口も手も足もすべて人間と同じなのに、得体が知れない。それはひと目見てわかった。なぜならそいつは、あきらかに人間にあるまじき、あきらかに人間であるにはおかしい点があったからだ。十六年生きてきてそれなりに常識ってものを知ったはずなのに、それを根底から覆すことを顔色ひとつ変えずにやってのけているあいつは、まさに異形の存在そのものだった。

 何でこんなことになってしまっているのか。自分は何も悪いことなんかしてないはずなのに、これまでの人生でつちかったあたりまえの価値観がひっくり返されてしまうなんて、理不尽きわまりない。これから俺は何を信じて生きればいいんだ。

 助けて。誰か助けてくれ。俺は今、死神に追われている――



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