ひとちがい #8
翌朝、叶は頭を襲う
アミリ達と別れた後にタクシーを拾って事務所に戻り、着の身着のままでベッドに倒れ込んだ為、ジャケットもスラックスも
壁の時計を見上げると、既に午前十一時を過ぎていた。叶は
『夜分にすみません。
彼の事でお伝えしなければならない事を思い出しました。
彼、左利きでした。その左手を他人に触られるのが好きじゃないらしくて、いつも手をつなぐ時は右手を出してました。その時、何となく指先が硬い気がしたんですけど、キッカケが無くて聞けませんでした。
参考になれば。
優美子より』
「左利きで、右手の指先が硬い、か」
読み終えて
「おはよぉ〜、って今日は遅いのねぇともちん!」
出迎えた
「あ、ああ、ちょっと昨日帰るのが遅くなって」
「そぉなんだ〜、何か顔色悪いわよともちん、大丈夫?」
首を
「それで、ご注文は? サンドイッチ盛り合わせでいいの?」
「いや、カレーライス」
叶が訂正すると、桃子は目を丸くして更に訊いた。
「あら、お仕事の依頼来たの?」
「ああ、何か
「へぇ〜、依頼人は女性?」
桃子が急に切り込んで来たので、思わず叶は目を泳がせた。
「え? あ、えっと」
叶のリアクションを見た桃子が意地悪そうに目を細めた。
「ははぁ〜、図星だなこりゃ」
「ハ、ハハ、いや〜その、ねぇ」
ごまかそうとする叶を無視して、桃子がキッチンに向けて大声で告げた。
「あなた! カレーライスひとつ! ともちん女性から依頼が来たんですって!」
またも頭痛に
『狩野リョウ』と打ち込んで検索をかけると、思わぬ結果が出た。
そのものズバリ、『狩野リョウ』と言うアカウント名のSNSが複数のプラットフォームに存在したのだ。意外な展開に困惑しつつ、叶はまず短文投稿アプリのアカウントを開いた。プロフィール
『指先が硬い気がした』
ギターを
仕事が早く終わりそうな予感に口角を吊り上げた叶の前に、カレーライスが差し出された。
「お待たせしました叶さん、どうぞ。何か嬉しそうですね」
「あ、サンキュー。そう見える?」
「ええ」
この『狩野リョウ』は、右利きだった。
演奏中と
いくら何でも、対面で食事等を共にしていた優美子が相手の利き手を間違える
《続く》
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