ひとちがい #5
叶は何とか脱出を
「クソ、タダモンじゃないな、この娘」
左手を右肩に当てつつ負け
「あ、もしもし
スマートフォンのスピーカーから
「オ、オイ、ちょっと、オレにも話させてくれよ」
叶が
「あのさ、悪いんだけどこっちまで来てくれる? 本当ごめん、じゃあ、店の近くのファミレスに居るから、じゃね!」
通話を終えたアミリは、
「さぁ、絶対に逃がさないわよ、いらっしゃい!」
されるがままの叶だが、それでも
「なぁ、もうちょっと説明を――」
「うるさい! 行くわよ」
アミリは叶の言葉を
先程の電話で指定したらしい二十四時間営業のファミリーレストランが見えて来た辺りで、アミリが叶の腕を極めたまま問いかけた。
「ねぇ、逃げないって約束する?」
「どうして?」
叶が顔を横に向けて訊き返すと、アミリは
「こんなカッコでファミレスになんか入れないでしょ? 約束してくれたら腕を放してあげるわ、ついでに彼女のフリもしてあげる」
「そいつはありがたいね。OK、約束するよ、ついでにメシも
「いいわよ、コーヒーくらいならね」
「何の
「してくれるんだろ? 彼女のフリ」
「そうだったわね」
アミリは
「さ、行きましょ」
「あ、ああ」
今度は叶が困惑する番だった。妙にぎこちない足取りでファミリーレストランの扉を押し開けたふたりを、ウェイトレスが
「いらっしゃいませ。二名様ですか?」
「あ、えっと」
返事に
「あ、後でもうひとり来ます」
「お待ち合わせですね、かしこまりました。当店は
「大丈夫、煙草吸わないから」
今度は叶が答えた。頷いたウェイトレスが、ふたりを席へ案内した。時間帯もあるのだろうが、客の数はまばらだったので通りに面した窓側の四人席に
ウェイトレスが水の入ったグラスをふたつとおしぼりを二本用意し、テーブルに置いて立ち去ったのを見送ると、叶がテーブルに肘を着いてアミリに尋ねた。
「さっき電話してた、ユミコだっけ? 君とどう言う関係?」
アミリはテーブルの上に開かれたメニューを取り上げて吟味しながら答えた。
「
「その幼馴染に一体何があったんだ?」
叶が
「とぼけないで! 優美子が来たら全てハッキリしてもらうからね」
アミリの
「コーヒーでいいでしょ?」
この場の会計責任者に逆らう訳には行かないので、叶は
数分後に、ふたり分のコーヒーが運ばれて来た。優美子と言うらしい幼馴染が現れない限り詳しい話をしようとしないアミリと世間話をするでもなく、叶は
入店から十分以上が
「優美子!」
声をかけられた優美子が、アミリを認めて手を振り返した。
「
「カンナぁ?」
優美子が発した名前に
《続く》
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