ブラッド・ライン #22
西条はわざとらしく膝の辺りを軽くはたくと、叶に向かって胸を反らせて微笑んだ。
「正義の味方、参上! なんつって」
叶が何かを言うより早く、後ろから玲奈が喚いた。
「あー! ハイエナ!」
想定外の方向からの声に、西条の膝から力が抜けた。
「ちょっとちょっと、勘弁してよせっかくこうやってマサ・ダンダの服でおめかししてんのに」
抗議する西条に、叶が呆れ顔で訊いた。
「こんな所で何やってんだ? トップ屋が欲しがるネタなんかここには無いぞ」
「別に己だって好きで来た訳じゃ、ってともちん後ろ!」
西条の指摘を受けた叶が振り返った
「痛ッ」
顔をしかめて後ずさる叶に、早川が薄笑いを浮かべて言った。
「
叶は傷口に指を当てて血を拭うと、身構えて言い返した。
「オマエこそ、不意打ちしなきゃならんくらい余裕が無いんじゃないのか?」
「何?」
早川が顔色を変えた。ナイフを握り直して半身に構える。
叶の後ろでは、起き上がった金髪を含む四人組が西条と
「ともちん! こっちは己に任せとけ! 来やがれチンピー電撃隊!」
途端に、四人組が
「何だそりゃあ!?」
「
「ぶっ殺すぞオッサン!」
「死にてぇかオォ!?」
だが西条は微笑すら浮かべて、四人組に向かって手招きした。
「吠えてねぇでかかって来い」
「やっちまえ!」
金髪の号令で、四人が一斉に西条に襲いかかった。
叶は後ろで始まった乱闘を背中で感じながら、早川のナイフをかわしていた。先日やり合った四人組のひとりとは違い、ナイフを突き出した後の引きが速く、反撃のキッカケが掴めない。ジリジリと後退させられる叶の
「うわっ」
バランスを崩して後ろへ倒れ込む叶に向かって、すかさず早川が間合いを詰めた。ナイフを真っ直ぐ、叶の心臓目がけて
「ぐあっ」
声を上げながら仰向けに倒れた叶を見下ろした早川が、ナイフを
「アニキィ!!」
叶は肩の痛みを堪えながら両手で早川の手首を掴み、眉間まで数センチの所で辛うじてナイフを止めた。だが早川は叶に馬乗りになり、ナイフの
「探偵、遺言を残すなら、今の内だぞ?」
すると、それまで苦しげに歯を食い
「何がおかしい?」
叶は刺す様な眼差しを早川に向けて言った。
「口が
その瞬間、叶が両手を左に振ってナイフを外し、頭を跳ね上げて早川の鼻柱へ頭突きを入れた。
「ぶぉっ」
予想外の一撃を食らい、早川が思わずナイフを放して顔を押さえた。その隙に早川の下から脱出した叶が、無防備な早川のこめかみ目がけて、
「がっ」
「目から火の出る、重力パンチって奴だ」
《続く》
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