ブラッド・ライン #10
「叶さんは、
「段田? いや」
瑠璃香の問いに正直に答えて、叶は続きを待った。瑠璃香はパンツのポケットからスマートフォンを出して操作し、一枚の写真を見せた。
「世界的なファッションデザイナー、マサ・ダンダと言えばお判りですか?」
画面に写る
マサ・ダンダこと段田雅弘は、美術大学在学中から
叶は軽く息を吐くと、平静を
「そりゃいくら何でも、オレだってマサ・ダンダくらい知ってる、さすかに服は持ってないけどな。その有名人がいのりちゃんに何の関係があるんだ?」
瑠璃香はスマートフォンをしまい、アイスティーで口を湿してから答えた。
「実は、皆口いのりさんは段田氏の
「ヒ、チャクシュツシ? ってオイ、つまりそれって――」
叶が皆まで言う前に、瑠璃香が断言した。
「そう、隠し子です」
今度はハッキリと、叶の目が開いた。
そう言われてみれば、先程見せられた段田の顔はどことなくいのりに似ている気がした。叶は
「ちょっと待て、マサ・ダンダって今いくつだ?」
「確か、八十一歳です」
返答を聞いて、叶は宙に視線を
「オイ、じゃあいのりちゃんは
「そう言う事になりますね」
驚きを隠さない叶に対して、瑠璃香は当然の事の様に
「って事は、いのりちゃんの母親とマサ・ダンダは、
気を取り直して叶が質問した。瑠璃香は落ち着き払った態度で答える。
「ええ、当時段田氏が静養で訪れた温泉旅館で、仲居として務めていた皆口さんのお母様を見初めて、密かに交際していたそうです。その頃、段田氏の奥様は肺を悪くされて入院なさっていたらしく、
「何が寂しさを埋めるだ、ん? そう言えば、アンタはマサ・ダンダとどうして知り合いなんだ?」
叶は根本的な疑問に行き当たった。超一流デザイナーと一介の弁護士との接点が、叶には思い当たらない。瑠璃香は少しだけ表情を
「それは、私が以前別の弁護士事務所に務めていた時に段田氏を担当させて頂いていて、私の独立を知って改めて
ただの女好きじゃないか、と言う台詞を叶は口に出す寸前で飲み込んだ。ここで彼女を不快にしても何の得にもならない。
「まぁそれはともかく、そのマサ・ダンダの隠し子を何で守らなきゃならないんだ? もう守秘義務は通らないぜ」
今度は皮肉でなく
「段田氏は今、重大な健康上の問題を抱えています」
《続く》
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