ブラッド・ライン #7
バンデン・プラをいのりの自宅マンション付近で停めた叶は、ハンドルに乗せた両手の指を
「おかしいな、まさか戻りの電車で何かあったのか?」
不安を
「あっ」
いのりと目が合ってしまい、叶は己の
「あ、あの、
改めて礼を言われて、叶はやや困惑しつつ笑顔で「あ、いえ」と返事した。
この場をどうごまかして
「あの、もしかして貴方、足ながおじさんですか?」
「は?」
想定外の質問に、叶は間抜け面でリアクションした。だがいのりの
「残念だけど、オレはこう言うモンだ」
叶が
「探偵、さん?」
「ああ。君の身辺調査の依頼を受けて、昨日から君に貼り付いてたんだが、バレちまったからこれでおしまいだ。驚かして悪かった」
謝罪した叶がバンデン・プラに戻ろうとすると、いのりが「あのっ!」と引き止めた。ドアを開けようとした手を止めて、叶がいのりを見た。いのりは真剣な表情のまま、叶に言った。
「足ながおじさんを、探してくれませんか?」
数秒、叶はいのりと目を合わせた。だが、軽く息を吐くと
「話、聞かせてくれる?」
いのりの
エレベーターで三階に上がり、ほぼ中央の三○二号室に案内された。表札には『皆口』と手書きされている。
「どうぞ」
いのりに促され、叶は
部屋の間取りは2LDKで、浴室とトイレは別になっている。人の気配が全く無い事に、叶は疑問を覚えた。いくら古い建物とは言え、この規模の部屋を大学生がひとりで維持するのは相当難しい筈だ。先程いのりが言った「足ながおじさん」が関係しているのだろうか?
いのりはリビングの中央を
「かけてください。今、お茶入れますね」
「ありがとう」
叶はソファに座ると同時に、トートバッグを観察した。厚手の布でできたトートバッグが、
考え込む叶の前に、いのりがマグカップを置いた。反射的にいのりを見上げて「ありがとう」と告げると、叶はカップを取り上げた。
「それで、足ながおじさんってのは?」
《続く》
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