友情遊戯 #35
「オイ、決意が
叶は
「その点は心配すんな。そいつを撃ったのはおまえって事になるから」
「ケッ、死人に口なしってヤツか」
ボヤきながら、吉鷹を見るふりをして後方を確認した叶の視界の
「幸雄、オマエ今スマホは?」
「え? あ、バッテリー切れてて」
叶は一度頷くと、ポケットから抜き出したスマートフォンを後ろ手に吉鷹に差し出して告げた。
「いいか、オレが
「え? おい、叶――」
「判ったな!?」
念を押すと、叶は脱いだ上着をぶら下げて武藤を睨みつけた。
「オイ、武藤さんよ、随分自信タップリだが、本当に撃てんのか? ハッタリじゃねぇだろうな? ホラ、撃ってみろ!」
「何かゴチャゴチャ喋ってたと思ったら、今度は安い
眼差しを鋭くした武藤が拳銃を握り直した刹那、叶が廊下に響き渡る声で叫んだ。
「行けぇ!」
同時に右肘で吉鷹の身体を押し、左手に持った上着を武藤に向けて投げ上げた。
「!」
反射的に
投げた上着に武藤の目を引きつけた隙に飛び込み前転で一気に間合いを詰めた叶が、フリッカー・ジャブの要領で左拳を武藤の右手首に打ち込んだのだ。思わず拳銃を落とした武藤の顎に、叶の右アッパーが決まった。
「貴様ッ」
咄嗟に反応して掴みかかった小泉の手を右腕で払い、顔面に左ストレートを叩き込む。
「ぶぉっ」
小泉の身体が吹っ飛んで壁に激突した。アッパーを受けてふらついていた武藤が、体勢を立て直して叶に殴りかかるが、パンチが大振りなので苦も無くかわす。よろめいた武藤の腹に右フックを入れ、後頭部に左フックを打ち下ろす。顔から
「がっ!」
肩を押さえて壁にもたれる叶の歪む視界に、苦悶の表情で拳銃を構える小泉の姿が見えた。
「馬鹿が……持って来てないと思ったか?」
「クソッ……用意がいいじゃねぇか」
痛みに耐えてへらず口を叩く叶に、小泉は立ち上がって両手で拳銃を握り直した。
「今ので立派な
「何?」
叶が歯を食い縛りながら訊くと、小泉は銃口を叶の眉間に向けて言った。
「君の所為でせっかく見つけた梶山殺しのホシが逃げてしまった、このままじゃ私は
「へっ、そうやって今まで
言い終える頃に、小泉の右足が叶の左肩を蹴りつけた。
「ぐあぁっ!」
思わず悲鳴を上げる叶の顔面に、革靴の底が食い込んだ。背中を
「がああああぁっ!!」
叫び声を上げる叶の額に
「生意気な口が利けるのもこれまでだ。
「何ッ?」
驚いた小泉が顔を上げた拍子に、叶の額から銃口が外れた。すかさず叶が右拳を小泉の手の甲に思い切り叩きつける。
「うっ」
軽い悲鳴と共に、小泉が拳銃を取り落として右足を叶の肩から離す。その隙に叶は横に転がって距離を取り、よろめきながら何とか立ち上がった。小泉が拳銃を拾おうとした時、叶の後ろから大声が
「そこまで!」
廊下に居る三人が、
《続く》
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