友情遊戯 #30
叶はスマートフォンのナビゲーションアプリに打ち込んだ住所を頼りにバンデン・プラを
到着したのは、真っ白な高い
叶は家の
『はい、どちら様でしょうか?』
叶はインターホンに顔を近づけて答えた。
「恐れ入ります、ワタクシは吉鷹幸雄君の同級生の叶と申しますが、お母様にお話をお
スピーカーから軽く雑音が聞こえた後、
『少々お待ちくださいませ』
返事から二十秒くらい
「叶様、ですね。奥様がお会いになるそうです。どうぞ」
「え? あ、どうも」
叶は戸惑いながら女性の後について行った。対応と言葉遣いから、恐らくこの女性は
青々とした芝生の中に敷き詰められた敷石を踏み締めて
「どうぞ、お入りください」
叶は再び会釈して中に入り、靴を脱いで用意されていたスリッパに足を入れた。何故か
「おぅ……」
溜息混じりに呟いた叶は、奥に
「叶、友也君? 随分久しぶりね」
「あ、覚えててくれたんですか?」
その女性、吉鷹の母である
真喜子に促されて、叶は対面のソファに腰を下ろした。そこへ家政婦がコーヒーの入ったカップを運んで来た。「お構いなく」と告げつつカップを受け取った叶が前を見ると、既に真喜子の前にはカップが置いてあった。どうやら中身は紅茶らしい。
叶は、コーヒーをひと口飲んでから口を開いた。
「あの、正直に申し上げますと、ワタシは今訳あって幸雄君を探しています」
「え? どういう事?」
動揺する真喜子に、叶は自分の名刺を取り出して見せた。まじまじと見つめた真喜子の口から、「探偵……さん?」という言葉が漏れた。叶は無言で頷いて続けた。
「守秘義務ってのがありますから依頼人は伏せますが、ともかく今幸雄君は行方が判りません。依頼人は警察には頼みたくないと仰っているのでお引き受けしたんですが、あの、幸雄君が行きそうな所に何か心当たりはないですか?」
「そんな……幸雄が」
叶の問いを聴いているのかいないのか、真喜子は
暫くして、真喜子も紅茶を飲んでから口を開いた。
「叶君も知ってると思うけど、幸雄は昔ボクサーになりたがってたのよね。それが、父の命令で外科医の道に進まざるを得なくなったの」
その事は、叶もある程度承知していた。
「最初は、父に進路を決められる事に不満を持っていたみたいだけど、父は
「そうでしたか」
叶の相槌に頷き、真喜子は続けた。
「ただ幸雄は國料大に入ってからは、真面目に医者を目指していました。それも多分、父から一人前の外科医になったら病院をやると約束してもらえたからなんでしょうが」
「あの、立ち入った話ですが、そのおじいさんの病院は、かなりの
叶が質問を割り込ませると、真喜子は困った様な顔で返した。
「よく知ってるのね。そう、父の病院は
叶は難しい顔で深く頷いた。要するに泰徳は、理想を追い求め過ぎて病院の経営を圧迫し続けた訳だ。患者への負担を軽減しようとした心情は察するが、それで病院を潰してしまうのは
真喜子は紅茶で口を
「だから、幸雄が父の死後に病院の経営状態を知った時は、物凄くショックを受けてたわ。
「そうだったんですか……」
叶は溜息を吐いてソファの背もたれに身体を預けた。少し考えてから、身体を起こして真喜子に訊く。
「その病院は、今どうなってるんですか?」
「それが、なかなか買い手がつかなくて、
答えた真喜子も、深い溜息を吐いた。
叶は再び考えを巡らせ、残りのコーヒーを飲み干して立ち上がった。
「判りました。突然お邪魔してすみませんでした」
「あ、ねぇ叶君、もし幸雄が見つかったら教えてくれる?」
「
笑顔で
《続く》
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