友情遊戯 #25
「ほら、吉鷹はどうやら
叶が目を落としたページには、
「アイツ……何でこんな」
「さぁな」
軽く応えつつ、西条は叶に背を向けて過去の日記を漁り始めた。その横で叶はそれ以上何かを探す気にならず、ベッドに座ってうな垂れた。
人は変わる。それは
いかな偶然とはいえ、久しぶりの再会を果たした喜びが、叶の心にノスタルジーというフィルターをかけてしまったのか。
足元を睨みつけて考え込む叶の耳に、西条の声が遠慮無く飛び込んだ。
「あー、ともちんのお友達は、こっから
「何?」
叶は顔を上げて、西条の手から日記帳を引ったくった。目に入ったページに書かれていたのは、吉鷹に医者になる事を命じたと思われる祖父、泰徳の死と、泰徳が経営していた病院が
『じいちゃんは、俺が立派な外科医になったら病院をくれると約束してくれた。なのに急に死んじゃって、残った病院は借金まみれだった。ふざけるな! じいちゃんは俺に大赤字の病院を押しつけようとしてたのか!? どっちにしろ、これで俺の輝かしい未来もパーだ』
血の
その後は、元々在籍していた國料大附属病院から
吉鷹の暗い心境に触れた叶は、日記帳を放り出してベッドに仰向けになった。その
「あった! 最初の医療ミスの時の日記!」
叶は天井を見つめて溜息を吐くと、勢い良く上半身を起こしてスプリングの反動を利用して立ち上がった。
「
叶は肩越しに西条を見て告げ、玄関に向かった。日記の文面を撮影しようとスマートフォンを取り出していた西条が慌てて呼び止める。
「え? おい待てよ、己はまだ用が済んでねぇぜ」
「ならサッサと済ませろ。鍵はオレが持ってんだ。閉じ込められたくなかったら早く来い」
叶は西条を先に外へ出してから自分も部屋を出て、ドアを
「サンキューともちん。おかげさんで良い記事書けそうだぜ」
西条の感謝の言葉を聞き流して、叶はスティールの階段を降りた。後に続く西条が煙草を取り出しながら訊いた。
「これからどうすんの? 行くとこあるんなら己の車乗んなよ」
「断る。もうオマエの世話にはならん」
叶はにべもなく拒否し、タクシーを拾うべく通りへ出た。だが西条も食い下がる。
「そんなつれない事言うなよ。タダで乗せてやるからさ」
「タダより高い物は無いって言うぜ」
叶が混ぜ返すと、西条は煙草に火を点けて応じる。
「何だよ、ここまで来たら
すると叶は、西条に向き直って言い放った。
「何が一蓮托生だ、これ以上オマエのダシに使われてたまるか! とっとと失せろハイエナ!」
さしもの西条も、叶の迫力に一瞬たじろいだ。叶は再び通りに向き直り、近づくタクシーに手を挙げた。
《続く》
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