友情遊戯 #20
叶が開けたのは、今まで居た部屋とは比べものにならない程家具や調度品が置かれた寝室の扉だった。室内からは微かに香水の匂いがした。
「女でも連れ込んでやがったか」
顔をしかめながら呟き、叶は扉のすぐ脇のスイッチを入れて照明を点けて中に入り、部屋の奥に鎮座するベッドにアロハシャツを放って周囲を観察した。
左側には木製のデスクと金属製の本棚、右側はテレビとBDレコーダーが見える。その隣にオーディオセットが在り、脇のカラーボックスにはCDやBDがギッシリ詰まっていた。
叶はデスクに取り付き、片っ端から引き出しを開けて、目当てのハサミを見つけてベッドに腰を下ろし、アロハシャツの
「何だこりゃあ?」
訝りつつ、叶は裾から取り出した三粒の錠剤を上着のポケットにねじ込んだ。
他に隠されている物が無い事を確認して、叶はアロハシャツを丸めて床に放り出し、再びデスクの引き出しを探り始めた。その中に、何やら書類が入った封筒があった。表に『
叶は封筒の中に指を入れて、書類をつまみ出して広げた。直後、叶の表情が険しくなった。
書類の正体は
「同じ
疑問を抱えた叶は、更に引き出しを
専門知識に欠けるので薬品名を見てもピンと来ない叶だったが、右下に書かれた担当医師の名前を見て思わず瞠目した。
「……何?」
そこには、『吉鷹幸雄』と手書きされていた。
つまり、吉鷹と接点があったのはこの部屋の主ではなく、その兄弟らしき男の方だった。しかもその男、梶山信浩も既に死亡している。そしてその死亡診断書は別の病院の医師が作成していた。
「どういう事だ?」
処方箋を
『医療ミス』
「……まさか」
独りごちた叶は、診断書と処方箋、診察券をポケットにしまって更に捜索を続けた。だが他にめぼしい物は見つけられず、叶は引き出しを閉めてデスクから離れた。腕時計を見ると、午後一時を大きく過ぎていた。
寝室を出た叶は、他の部屋を
「さて……」
玄関で靴を履きかけた叶が、急に動きを止めた。素早く右手を上着の内ポケットに突っ込み、スマートフォンを取り出して画面を確認した。途端に、叶の表情が少し
「お、来た」
《続く》
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