友情遊戯 #3
「いや
叶が改めて
「あぁ……父さんが死んで、母さんの方の苗字に変わったんだ。引っ越した後にな」
「そうだったのか、そう言えば親父さん医者だったっけか。
叶の言葉を渋い顔で聞き流した吉鷹が、逆に叶に
「で、どうしたんだ?」
叶は意表を突かれて数秒絶句し、呆れた拍子に首を傾げてしまい、忘れかけていた激痛に再び襲われた。
「痛ッ! オマエなぁ、こっちは救急車で来てんだぞ、もうちょっとマジメにやれよ」
「あ、あぁすまん」
叶が顔を歪めながら抗議した事で、吉鷹は本来の職務を思い出してデスクの上の
「ムチ打ちだな」
「オイ、随分アッサリだな、大丈夫か?」
「何だ、俺の
急に
「そんなに不安なら明日にでも
「何だ、よく知ってるな」
叶が苦笑しつつ言うと、吉鷹は笑顔で返した。
「当たり前だ、俺はずっとお前のファンだったんだぜ! たまに試合も観に行ってたんだからな。全く、俺達の
「あぁ、タモさ、いや熊谷さんのジムには一応今も世話になってるんだが、本業はこっちだ」
叶も笑顔で
「探偵? 何でまた?」
訝しげに訊く吉鷹を見返して、叶は表情を引き締めて答えた。
「……麻美を探す為だ」
「麻美って、妹さんか? 居なくなったのか?」
吉鷹の更なる質問に、叶は無言で頷いた。
「そうか……」
吉鷹もつられて
「まぁ、それなら明日の午前中来られるな。十時に予約入れとくぞ」
叶の了承を待たずに、吉鷹は勝手に整形外科の外来診療予約を入れてしまった。
「じゃ、お大事にな」
診察を終わらせにかかった吉鷹に、叶は不満げに訊いた。
「オイ、もう終わりかよ?」
吉鷹は
「あ、すまないけどコルセット持って来てください」
「コルセットォ?」
叶が戸惑った顔で言うが、吉鷹は聞き流して立ち上がり、看護師が持って来た物を受け取った。
「動かすと痛むだろ、これで首を固定しとけば大丈夫だ」
「何かキツいな」
「
「オマエがまた診るのか?」
「馬鹿言え、俺は明日当直明けで休みだ。それに俺は外科医だ、整形は専門外」
少し
「お大事に」
「ありがとう」
看護師に礼を述べた叶が、スマートフォンを
「玲奈、待たせたな」
呼びかけられて顔を上げた玲奈が、首を固定された叶を見て思い切り吹き出した。
「プッ! ちょっと何それアニキ~! お、親指みたいじゃん、ウヒャヒャヒャ」
「オイ! 変な笑い方するな、
叶が注意しても、玲奈は
「だぁって、その頭マジで親指みたいなんだもん、ウヒャ、ウヒャヒャ」
「だぁから笑うなって!」
叶が声を荒らげても玲奈は全く意に介さず、それ所かスマートフォンのカメラでコルセット付きの叶の写真を撮り始めた。
「いや~ウケるコレ、
叶は周囲の冷たい視線を感じながら、大笑いしつつシャッターを切りまくる玲奈を引きずる様にして会計を済ませ、そそくさと病院を後にした。
《続く》
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