おとうと #20
『WINDY』を出た叶は、玲奈と美緒にメールを送ってからバンデン・プラに乗った。
陽が暮れた頃に事務所に戻った叶がスマートフォンを取り出すと、美緒からの返信が来ていた。内容を確認してメールを閉じると、受信ボックスを眺めて独りごちた。
「玲奈からはまだか……まぁ、最悪ジムで頼むか」
スマートフォンをデスクに置いて、叶は居住スペースに入ってジムへ行く支度を済ませ、夕食を摂る為に『カメリア』へ下りた。
翌朝、叶のバンデン・プラが服部
ふたりが歩き出すのを暫く眺めてから、叶はバンデン・プラをゆっくりスタートさせた。右手でハンドルを操作しつつ、左手と口を使って器用にコッペパンの袋を開け、中身を口で引っ張り出して
叶が高校の最寄り駅の前に到着してから十分ほど経った頃、服部姉弟が他の生徒達に混じって改札を通って出て来た。よく見ると、その後方に玲奈の姿があった。目ざとくバンデン・プラを見つけた玲奈が、誇らしげな顔でサムズアップした。昨夜にジムで会った時に、校内での美緒のガードを頼んでおいたのだ。当然、ギャラを要求されたが。
三人が校門をくぐったのを見届けると、叶はアクセルを踏んだ。
数十分ほど走って
五階の
足音を立てない様に気をつけながら窓側へ歩を進め、外界とベッドを
「どうも。初めまして」
叶が挨拶しながらカーテンを越えると、源治郎はヘッドフォンを外して身体を起こした。
「誰だね君は?」
重低音の声が、病室に響く。叶は恐縮しながら上着のポケットに手を入れ、名刺を抜き出して源治郎に差し出した。
「叶と申します」
「探偵? 探偵が何の用かね?」
名刺に目を落とした源治郎が怪訝そうな顔で訊くと、叶は
「実は、ご
「忍の?」
源治郎の顔色が、変わった。
《続く》
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