おとうと #14
灰色の空が広がる午前の、様々なジャンルのマニア達が集まる街の片隅にあるインターネットカフェから、ひとりの
その巨漢の背後から、ひとりのスーツ姿の男が近づいて肩を二度叩いた。
「服部忍君?」
スーツの男が呼びかけた途端、巨漢の顔が強張った。
巨漢の手が肩にかかった男の手を取った、と思った次の瞬間、男の身体が
「
「待てよオイ! お、オレはオマエの姉さんに頼まれてオマエを探してる探偵だ!」
「え? 姉ちゃんが?」
忍が足を止めて、
「ああ、姉さん、心配してるぞ」
「姉ちゃん……」
佇んで目を泳がせる忍に、叶が歩み寄る。
「まぁ取り敢えず、話聞かせてくれよ」
叶に促され、忍は無言で頷いた。
ふたりは街の中心からやや離れた所にあるカフェに入った。忍は辞退するつもりだったが、叶が
数分で注文した物が
「やっぱり、ネットカフェを渡り歩いてたな」
「はい、そうです。他に行く所が思いつかなくて」
「だと思ったよ」
呟いた叶が、コーヒーをひと口飲んでから
「しかし、漫画も柔道も捨ててにわかネットカフェ
「いや、それは……ちょっと、違うんですけど、あ、そう言えば、何で僕があそこに居るって判ったんですか?」
忍の逆質問に少々面食らったものの、叶は
「そりゃあ、夕べ遅くまであっちこっちのネットカフェに聞き込みかけて、
叶の差し示した窓の外には、バンデン・プラが
「そうですか……でも、僕はまだ家には帰れません」
「帰れないって、思い詰め過ぎじゃないか? オマエが
「えっ?」
驚く忍に、叶は微笑して続けた。
「ちょっと苦労したが、オマエがかかってる整形外科を見つけてな、そこで聞いたんだよ。オマエが学校で手を気にしてたって話を耳にしたし」
「は、はい……」
「柔道やる時は相手の
「え、ええ……」
「柔道はともかく、漫画の方は編集者に頼んで新連載の開始を遅らせてもらえばいいだろうがよ?」
「それが、ダメなんです」
「はぁ? 何でだよ」
叶が疑問を
「せっかくデビューさせてもらえるのに、こっちの都合で先延ばしにしてしまったら、連載できなくなっちゃうかも知れないし……」
尤もらしく聞こえる忍の理由付けに、叶は
「それなら、何で柔道辞めないんだ? 漫画家になるのが子供の頃からの悲願だったんだろ? それともそんなに親父さんが怖いのか?」
「違います! そうじゃなくて……」
急に
「オマエ……もしかして、親父さんに褒められたいのか?」
忍が
《続く》
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