おとうと #9
自分のカレーライスと、何故か西条が飲んだコーヒーの分の代金まで払う羽目に
「クソ、あのハイエナ」
上着のポケットから西条の名刺を取り出してデスクに叩きつけ、ソファに腰を下ろしてノートパソコンを開いた。改めて、『服部源治郎』で検索する。
服部源治郎は、
大学卒業後に入社した大手警備会社を定年退職した後は、母校の柔道部で監督をする
次に叶は検索エンジンに、美緒と忍、それに玲奈が在籍する「
升淵高校の柔道部は、全国的にはそれほどではないが、インターハイの地区予選では何度も優勝していて、ここの所は二年連続で個人、団体共に出場を果たしている。その立役者になっているのが、どうやら
藤堂は二年続けて個人戦七十キロ級と団体戦の両方にエントリーし、いずれも優勝している。インターハイ本戦では個人戦三回戦、団体戦準決勝
叶はノートパソコンを閉じると、スマートフォンを取り出して玲奈にメールを送ろうとしたが、少し考えて止めた。画面の右上の時計表示を見ると、もう十九時近かった。
「……行くか」
十九時三十分過ぎに、叶が『熊谷ボクシングジム』に姿を現した。
「オーッス」
「オイ護、玲奈来てるか?」
「え? あ、いやまだ来てないんじゃないスか?」
軽い口調で答える片岡に無言で頷くと、叶は事務所でテレビを観ながら
五分ほどでジャージに着替えて更衣室を出た叶が出入口を見ると、丁度良く玲奈が入って来た。
「チーッス」
「あ、玲奈ちゃん! オイッス!」
「玲奈! ちょっと」
「あ~? なぁにアニキィ」
大きめのスポーツバッグを重そうに
「悪いが、オマエに頼みがある」
玲奈はアルバイト終わりの疲れた表情をやや引き締めて訊き返した。
「何? 今日の依頼の事?」
「ああ。服部忍と、それから今の柔道部の主将の事、ちょっと調べてくれないか?」
「えぇ~? メンドクサいな……あ、ギャラくれる?」
「ギャラぁ? しっかりしてるな……考えとくよ」
「OK、判った。何とかしてみる」
「頼む」
叶は軽く頭を下げ、玲奈から離れて身体をほぐし始めた。玲奈は事務所の熊谷に挨拶してから、女子更衣室に消えた。
《続く》
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