おとうと #8
勝ち
「オマエもブンヤの
それを聞いた西条は、つまらなそうに明後日の方向を向いた。
「
その
「オレの依頼人に何かしてみろ! ただじゃおかんぞ!」
突然の叶の
「まぁまぁ叶さん、落ち着いて。はい、セットのコーヒー。そちらのトップ屋さんもいかがですか?」
叶は鼻から荒い息を吐き出して手を放し、大悟に頭を下げてからコーヒーに手を伸ばした。片や西条は安堵した様に息を吐き、乱れた服を直して大悟に告げた。
「あ、そう言えばオーダーしてなかったね。じゃマスター、己にもコーヒーくれる?」
「かしこまりました」
大悟が
「今のは冗談、こっちだって確証無しに飛び込んだって相手が応じてくれないのは判ってるさ、だから、その確証を得る為にもあんたに協力してもらいたいんだよ。なぁ、頼むよ」
「断る」
にべもない叶に、西条は落胆した顔で言った。
「つれねぇなぁ。でも、己は絶対諦めねぇからさ」
負け惜しみとも取れそうな台詞を吐いて立ち上がった西条の前に、大悟がホットコーヒーを淹れたカップを差し出した。
「お待たせしました」
「あ、どうも」
反射的にカップを受け取った西条は、コーヒーをひと口飲んで表情を和らげた。
「あ、美味い! マスター、いい腕してるね~」
「ありがとうございます」
礼を述べる大悟に更なる笑顔で応えると、西条は立ったままコーヒーを
コーヒーを飲み干した西条は、満足げな顔でカップをカウンターに置くと、「本当に美味かった。また来るよ」と言い残して出入口に向かった。
「あ、お
出て行こうとする西条に気づいた桃子が慌てて声をかけると、西条は右手をひらひらして言った。
「つけといてよ、探偵さんに」
「何ッ!?」
捨て台詞に驚いた叶が慌てて立ち上がるが、既に西条の姿は店内には無かった。外へ走り出た叶の視界の端に、重厚なエンジン音を
「また会おうぜ、探偵さんよ!」
「オイ、待て!」
叶が呼び止めるより早く、西条が駆るオープンカーは唸りを上げて遠ざかった。
《続く》
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