おとうと #5
美緒はかぶりを振り、ミルクティーをひと口飲んでから話を続けた。
「元々、忍はあんまり外に出たがらない子で、小さい頃からずっと部屋で漫画ばかり読んでました。その内、その漫画のキャラクター等を
「へぇ、そっちの才能の方が先に開花してたんだ」
叶の言葉に、美緒の表情が少しだけ
「はい、私や母が絵を
数度頷いてコーヒーを飲んだ叶が、カップを置いて訊いた。
「それでも忍君は、
「無理です……父が、辞めさせてくれる訳ありませんから。だから忍はずっと、
美緒が言葉を切った。叶は先を
「去年、忍が
「入選? そりゃ凄いな、プロに一歩近づいた訳だ」
気楽な調子で言う叶に対して、美緒は
「それはそうなんですけど、雑誌の編集者の方から連絡が来た時に、忍が対応に困って私に助けを求めて来たんです。その時に私は入選の事を知って、忍がどうしても父にバレない様にしたいって言うものですから、仕方なく私が、忍の代わりに編集者の方とお話する事になったんです」
言い終えた美緒が、通学
「え? これ?」
雑誌のタイトルは『月刊少女パステル増刊号』。そう、忍が入選を果たしたのは少女漫画誌の新人賞だった。
「はい、この本に、忍が入選を
美緒が見せたページには、『最も危険なふたり』というタイトルと、とても先ほどの写真に移った
「こ、このペンネームは?」
思わず笑いそうになるのを、顔面の筋肉に無理矢理力を入れて
「忍が、自分で考えたんだと思います……彼はウサギ年ですから」
「あ、あぁそう、ウサギ年、ね」
顔を引きつらせて細かく頷く叶だが、忍の
「この作品が掲載されてから、読者から結構反響があったそうで、連載をさせてもらえる事になったんです」
「え!? 本当に?」
突然のサクセスストーリーに驚く叶だったが、美緒の表情は寧ろ暗さを増した様に見えた。
「はい、それからは私も何度も編集者の方と話し合ったり、忍と一緒にお話を考えたりして、第一回目の掲載号も決まったんですけど、そこでまた問題が起きたんです」
《続く》
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