おとうと #4
「と言うと?」
「忍は、本当は柔道はやりたくなかったんです。けど、父の言いつけと言うか、命令で、仕方なく」
「そうなんだ、でもお父さんはどうして弟さんに命令なんてしたの?」
叶の質問に、美緒は言い
「……私の、せいなんです」
「え? どういう事?」
「私は、生まれつき心臓が悪くて……
叶は、
「一応、手術はしたんですけど、やっぱり運動とかには制限がかかってしまって、ましてや柔道なんてとんでもないっていう状態で」
美緒の説明に頷きつつ、叶はスマートフォンに「単心室」とメモする。その対面で、
「私の病気の事を知った時は、父も母も
「よくある話だな」
若干の皮肉を込めた叶の
「なので、二年後に忍が生まれた時は、父はもう本当に喜んだそうで、あんなに嬉しそうな父は見た事が無かったって、母も言ってました」
顔を
「でも、当の忍は凄く大人しい性格で、柔道に全く興味を示さなかったんです。それを、父が無理矢理道場に連れて行ってやらせたんです。忍は最初、物凄く泣いて嫌がっていました。でも父は許してくれなくて」
「親のエゴってのは、子供には迷惑だからな」
今度の叶の相鎚はスルーされた。
「ただ、暫くやらされている内に、隠れていた才能が開花した、と言いますか、血は争えないと言いますか、ともかく上手くなり始めたんです。私もたまに道場で
話している美緒の顔に、
「でもそれなら、お父さんとの関係は
叶の
「それが……そうは行かなかったんです」
《続く》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます