匿う男 #15
玲奈の右拳が
「あぁっ!!」
「このクソガキ!」
思わぬ逆襲に
「オマエの相手はオレだろ」
叶が言うと、タンクが振り向きざまにフックを放った。だがその拳は空を切り、逆に叶の拳がタンクの腹に突き刺さった。
「ぐぉっ」
タンクが身体をくの字に折って
「逃げろ!」
頷いた玲奈が玄関から身体を出しかけて、まだうずくまっているラビットを振り返って言った。
「ウチが女だからって油断してんじゃねぇよ、バァーカ!」
ついでに舌を出してから、玲奈は
「野郎、ブッ殺す」
叶は血の混じった唾を床に吐き、ファイティングポーズを取って言い返した。
「やってみろ、チンピラ」
叶の挑発に乗る様にタンクが床を蹴り、二段蹴りを繰り出した。だが叶は冷静にバックステップでかわし、タンクの顔面に左ジャブを当ててのけ反らせ、空いたボディに右ストレートを打ち込んだ。それでもタンクは鬼の
「てめぇ、何でそんな力が残ってんだ?」
目を血走らせてタンクが訊くと、叶は鋭い視線でタンクを見返して答えた。
「言ったろ、オマエの攻撃が軽いって」
「ぬかせ!」
逆上したタンクが左右のパンチを連打するが、叶の身体に
「ぶぉっ」
タンクの身体が吹っ飛び、デスクに背中から激突した。そのまま、タンクは気を失って床に崩れ落ちた。
「
大きく息を吐きながら呟くと、叶は倒れたソファを起こして座り込み、深く頭を垂れた。だが、デスクの向こうから聞こえた物音に、顔を歪めて頭を上げる。
玲奈のパンチによるダメージから回復しつつあるラビットが、額に
「た、探偵さん……やるね、タンクを、た、倒すなんて……」
叶は膝に手を付いて立ち上がり、ラビットに歩み寄った。
「一応元プロボクサーなんでな……それよりオマエ等、何でそこまでしてあの娘を狙う?」
叶の質問に、ラビットはぎこちない笑顔で返した。
「言う訳、無いじゃん……守秘義務、って奴」
「何が守秘義務だ、どうせ金で
「探偵さんだって、一緒だろ?」
挑戦的な目で言い返すラビットを、叶は怒りのこもった目で見下ろした。
「一緒にするな、少なくともオレはラビットなんてダセェニックネームは名乗らねぇ」
「ダサい? あ、そう……おれ、ウサギ年なんだよね」
「ほぉ、じゃあタンクは何なんだ? 戦車年か?」
叶がバカにした様に訊くと、ラビットは気絶しているタンクを見て言った。
「タンクは、頑丈だからね……LOLから取ったんだ」
「LOL? 何だそりゃ」
「オンラインゲームだよ、知らないの?」
「生憎ゲームなんかやってる暇は無くてな」
叶がそっぽを向いて答えた瞬間、ラビットが叶に向かって飛びかかった。その右手には、いつの間に拾ったのか、ナイフを握っている。
《続く》
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