匿う男 #5
「あ、すまん」
「どっか、新聞社か出版社にでも所属してるのか?」
「前はしてた。けど三年くらい前に
スマートフォンを見つめたまま答えて、玲奈はコーヒーカップを口に運んだ。叶もコーヒーを啜り、周囲を軽く見回してから小声で問いかけた。
「殺されなきゃならない様な心当たりはあるのか?」
玲奈はスマートフォンをポケットにしまい、ふて腐れた様に返した。
「ある訳無いじゃん、パパは昔っから、ウチやママが仕事の事訊いたって何にも教えてくんなかったもん」
「ほぉ、じゃオマエの親父さんは、家庭を
「そんな事無い!」
再び声を荒らげた玲奈に、店内にある全ての目が向いた。叶が慌てて周囲に会釈してから、玲奈に顔を近づけて小声でなだめた。
「落ち着けよ、何だよ急に」
「だって、違うもん、確かに、仕事してる時は何日も帰って来なかったり、
俯いて
「おぉ……」
そこには、幼い玲奈と彼女の母親らしき女性が、芝生の上に
「パパは、お休みの日には必ず、ママとウチを外に連れ出して、沢山写真を撮ってくれた……ウチは、パパの撮った写真が大好きだった……でも、パパは変わった、何かに取り
言葉を切った玲奈が、鼻を啜り始めた。見かねた叶が紙ナプキンを一枚差し出すと、玲奈は受け取るなり大きな音を立てて鼻をかんだ。
朝食を終えて事務所に戻った叶に、後ろから玲奈が訊いた。
「ねぇ、ここテレビは?」
「無いよ」
「え、マジで? つまんな」
叶の
「オイ、そこ座るなよ」
叶が注意するが、玲奈は聞く耳を持たずに唇を尖らせながらゲームをプレイしている。舌打ちしつつ叶がソファに座った直後、玄関扉をノックする音が聞こえた。
「誰だよ朝っぱらから」
悪態を吐きつつ玄関に近づいた叶が、扉の向こうへ告げた。
「まだ営業してませーん」
すると、外から叶が聞きたくない声が聞こえた。
「叶君? 石橋です」
叶の顔が一瞬で青ざめた。足音を立てない様にしてデスクに近づき、
「
「!?」
「珍しいな、アンタがここに来るとは。何か用か?」
「いや、ちょっと聞きたい事があってね。入ってもいいかな?」
《続く》
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます