第26話 作戦会議
「急に声かけて悪かったな」
「いや、気にしていない」
「用事なんでしょ? なら文句はないさ」
ギルドから少し離れたところにある宿を取ったダルク達は、その部屋で集まっていた。そこには、ルーサーとハルも一緒にいた。二人は別に遠くの宿をとるつもりではなかったらしいのだが、空いているところを探しているうちにここになったということだった。明日、同じ試験を受けるということで、この二人とも少々情報共有しておくということは悪いことではないのではないかと考え、ダルクはこの部屋に招き入れたのだった。
そこで、ダルクは書類に書かれていた規則についての穴について事細かに話してみせたのだ。全員がその話を聞いている間目を丸くしていた。
「と、こんな感じだ。試験を受ける際に危険がある可能性があることはわかったか?」
「目ざといわね、ダルク。普通そこまで考えないわよ」
ダルクの締めくくりにパトラがあきれた感じでため息を吐きつつそう返す。他の3人も同じ意見のようで、軽く頷いていた。
「ダルク、僕もパトラの意見に賛成する。そこまで警戒することなのか?」
「アタイも考えすぎだと思うな。そんなところまで考えていたらキリがない」
「俺も、これが考えすぎっていう結論が一番平和だとは思ってるよ」
ルーサーやハルからの攻めにダルクは頭を掻きながらそう答えた。だが、ダルクもそこで引き下がるようなことはせずに言葉を続ける。
「でもな、気がかりなことがあるのも間違いじゃないだろう。前の宿場町でのジルの話を覚えてるか? 同行者の貴族の話だ」
「ああ、覚えているが……その妨害を気にしているのか?」
「そういうことだ。ジルがあの宿場町で少し調べた程度で貴族であることどころか、冒険者のランクまでわかったんだ。何かしらのことで有名である可能性は高いと思っている」
「言われてみれば……」
「杞憂ね……と断ずることは私にはできないわ」
ルーサーはダルクの言ったことに少しではあるが納得したようだった。パトラもかなり警戒の意思を見せていた。
「もう一つ、気になることがある。ほかでもねえ、ジルのことだ」
「それは私も少々気になっていました、彼らはギルド内でも名の知れたような冒険者であるという感じがしました」
ミーアの言ったことにダルクは頷いた。ジルはスーザンをはじめとしたギルドの人々に話しかけられていた。それだけならよく顔を出す客くらいであろうが、それにしては親しまれているような気がしていたのだ。
「ジルはスーザンに、滅多に人を紹介しないという評価をされていた。凡百の冒険者程度がそういう評価をされるっていうのは少々おかしいことじゃないか?」
「……つまり、ダルクはジルは人を紹介することを頼まれる程度には実力を認められた冒険者だと思っているわけね。でも、それがなぜ今回の件に関わるのかは、ちょっと理解しかねるわね」
「実はそうとも言えない。ジルもその貴族も同じ星7なんでな。勢力争いってわけじゃないが、貴族の奴が勝手にジルを敵視しているっていう可能性は否定できない。そうでなくても、自分の息のかかっていない星5以上の冒険者を増やしたくないのかもしれないからな」
「「「「……」」」」
ダルクが話し終えると全員は黙り込んでしまった。確かにダルクの言ったことに間違いはないのだ。話を聞いて少し恐怖を感じたのと同時に、怒りをも覚える。
「……とりあえずだ、何かがあったとしても全力でかかる。警戒は怠るな、対策しようがないかもしれないがな」
ダルクの言葉に全員が首を縦に振った。
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