第25話 試験の内容


「試験の内容は格上との一騎打ち……ね……。これ本気で言ってるのかしら?」


「そうですね……。でも勝ち負けを競うわけではなく、あくまで技能を見るためですので。そのあたりは考慮していますよ。ひと昔前までは魔物との勝負だったんですけど、調教が間に合わなくて……」


 試験の内容を聞いて、パトラが文句を言い、スーザンがそれに対して少々バツが悪そうに答える。その答えを聞いたパトラは、まあ事情があるなら……と引き下がった。


「俺としては、ダルク、パトラ、ミーアと相手する冒険者がかわいそうだと思うんだけどね」


「ジル、俺たちを買いかぶりすぎじゃないか?」


 ジルの呟きにダルクは少々あきれたような視線を返した。その視線にジルはため息をついて、ダルクに近寄るとそっと耳打ちするように話す。


「……少なくともだけど、ルー・ガルーを3人で討伐できるのは星12くらいの実力を要する。どう考えても規格外なんだよ、君たち3人ともがね……。冒険者になりたての君たちだけど、実力だけならメロリヨンでも相当上位だと思う」


「……そんなもんかね」


 ダルクは訝し気に首を傾げたが、それ以上の問答はやめて試験の説明の書類に目を戻す。それには試験の内容やその評価基準について書かれてはいる。そういうものを見ると粗探しをしてしまうのもダルクの癖の1つであった。今回の書類でも、いくつか気になる点に目星をつけていた。

 まずは相手について。試験の相手はギルド側が選定する、基本的には格上であるということが記されているのだが、そのあたりを見てもランクがどれほど上の相手なのかは書かれていない。ということは、ギルド側はどれだけ上の人物を当てても問題はないということになるのではないか。

 次に武器について。両者ともに、危険度の少ない木製の武器を使用すること、となっている。だが、一方で防具についての記述がない。もし相手が魔法の使い手であれば、指輪のようなタイプの補助道具もある。そういうものが見逃される、つまりは防具にしか見えない武器を使うことに関して抜け道がある可能性がある。

 最後、これはダルクも危機感を持たざるを得ない内容だった。勝利した場合は合格、敗北した時の合否はギルドが判断するという記述であった。明確な基準がないのだ。もし何らかの不正をするのであれば一番に利用されるだろう。

 穴だらけじゃねえか、とはおもうが口に出すようなことはしない。


「では、明日の朝7の刻にギルドのほうにお願いします」


「ああ、わかった、よろしく頼む」


 ダルクはスーザンにそう言って、部屋を出る。ジル達に別れを告げると、すぐさまギルドを出た。そんなダルクに、ミーアとパトラは慌ててついていく。


「ダルク、もうちょっとゆっくりしていってもよかったんじゃないの?」


「私もそう思いますが……」


「……ちょっとギルドでは話しにくいことだからな。少し遠めの宿をとる」


「……なら仕方ないわ」


 ダルクの真剣そのものといった口調にパトラが警戒心を強めるように返す。ミーアも返事こそしなかったものの、そのダルクの表情を確認する目は真剣そのものであった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る