第24話 メロリヨンのギルド
「……城下町とは比べもんになんねえくらいデカい施設だな、こりゃ」
「冒険者都市の名は伊達じゃないだろう? ここは本部だけど、街にはあと3つギルドの施設がある」
そういう会話をするダルク達の目の前にあるのは、メロリヨンの冒険者ギルドであった。そのギルドの建物は城下町にあったギルドが5つはすっぽり入るだろう大きさで、小ぶりな城のようにも見える代物だ。
馬車主に代金を支払った後、ダルク達は竜人のハル、ダークエルフのルーサーも一緒にとりあえずギルドに行くことにした。冒険者としてまずは顔を出す必要があるのもそうだが、ここに来たのは試験のためであって、そのためにはまずギルドに向かわなければ話にならない。と、いうわけで来てみればとんでもない大きさの施設が鎮座していた、というだけの話である。
「ふーん、大きければいいってものでもないと思うわ。問題は中身よね」
「まあそうですが、大きいということはそれだけ多くのものが入るということでもあります。この分なら医療関係の設備のほうも期待できます」
パトラは少々見栄を張ったようなことを言い、ミーアは医療のほうを気にしている。ルーサーとハルはその大きさに唖然として言葉を失っている。
「とりあえず、入ろうか」
ジルはそう言って、ギルドの扉を開ける。そこにあった光景。それは見渡す限りの人であった。ギルドの職員の制服を着た人も、武器を背負った人もかなり多い。ダルクはなるほど、これが本場かと納得する。どれくらいの実力者かは知らないが、ここにいる人間は腕に自信があるような連中ばかりなのだろう。それと同時に、よくもまあこんなところに連れてきやがってとも思う。
「あら、ジルさん、お久しぶりで」
「あ、ああ、ちょっと城下町のほうに行っていてね」
制服の女性の一人が、ジルのほうに歩み寄ってくる。それに対してジルはそれとなく返事をしていたが、なんとなく声がかすれている。一瞬カリギュラのことでも頭をよぎったのだろうか。
「で、ジルさん。本日はなんの御用事で?」
「ああ、この4人に試験を受けさせようと思ってね。ああ、こっちの2人は乗り合い馬車で一緒でね、試験を受けるようだったから連れてきたというわけさ」
と、ジルが答えると、その女性はものすごく目を丸くする。首を傾げ、少し考えるようなそぶりをしてからもう一度ジルに向き合った。
「…………えっと、ジルさん、本気ですか? 滅多なことでは他人を推薦したりしないようなジルさんが試験の斡旋、しかも4人とは……」
「君たちは俺のことをなんだと思っているのか、小一時間ほど問い詰めたいところだね」
ジルは少々あきれたようにため息を吐いてからそういった。女性もそれに習うようにため息をついたが、それで切り替えたのか仕事の顔になる。
「試験の斡旋については承りましょう。さて、皆さん、メロリヨンへようこそ。私はこちらで受付嬢をしております、スーザンです。試験の受付をしますのでこちらへどうぞ」
女性、スーザンがギルドの奥の方の部屋へと案内する。8人はそれについて歩き始めた。
「ギルドマスター、忙しい時に悪いな」
ある冒険者が、3人の仲間を引き連れてメロリヨンの街のギルドマスターと会談するべく、ギルドの一番奥にある部屋を訪れていた。普通に考えれば、一介の冒険者無勢がギルドマスターと直に出会って、しかも会談をするなどありえない話ではあるし、その口調は目上の人物に対するそれではない。しかし、ギルドマスターのほうはその冒険者のリーダーに対して深く頭を下げる。
「いえいえ、滅相もございません!! オレンジ伯爵のご子息であられますオラニエ様と会談できることこそ、光栄の極みでございます」
「そこまで堅苦しくなくてもいい。立ったまま話すのもなんだ、少し座らせてもらう」
オラニエと呼ばれたその男は部屋においてあるソファになんの躊躇もなく腰掛ける。ギルドマスターは棚から一本のボトルを取り出し、用意したカップへと注いでオラニエに差し出した。
「こちらをどうぞ」
「気が利くじゃないか」
オラニエはそれに口をつけ、顔をほころばせる。
「オラニエ様、今回はどのようなご用件でございましょうか?」
「簡単だなことだ。ジルの奴が推薦した冒険者が試験を受けに来る。今頃受付をしている頃だろう。その相手をこちらで用意させてもらいたい。ああ、もちろん、それなりの対価は支払わさせてもらう」
オラニエはかなり邪悪な雰囲気でギルドマスターにほほ笑みかけた。
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