part2 パトラの章1

第18話 報酬と昇格について

 ルー・ガルーの討伐から3日。ダルク達はギルドに顔を出していた。目的は当然、その時の報酬である。この3日というもの、ダルク達は依頼を受ける気にもなれずにいた。とはいえ、ダルクは遺跡で手に入れた紫電陽炎を振るうための鍛錬、ミーアは少なくなっていた薬の材料になる薬草の採取、パトラは武具店で装備の確認と、それぞれが有意義に過ごしていた。

 ということで、報酬を貰うついでに依頼も探そうかということになっている。


「こちらがその報酬で金貨30枚ですね。ルー・ガルーについてはこちらで解体いたしました。希望の素材以外はこちらで買取させていただくことも可能になっています。全て買取させていただくと金貨で150枚ほどになります」


「うーん、意外としょっぱい?」


「パトラ、報酬もらうときに受付の目の前でそんなこと言うのはどうかと思うんだが……」


 想定していたよりも少なかったのか、パトラが文句を言い、それを聞いた係りの人が顔を引き攣らせているのをみて、ダルクは額に手を置きつつパトラをたしなめる。ミーアはその様子を興味なさげに見ているだけで、特に言うことはない様子だった。


「うーん、査定額を見るに、内臓系統と毛皮がしょっぱいわ。あ、もしかして焼けてた?」


「そうですね、雷撃魔法による損傷が激しいですので少し値段は抑えめになってます」


「じゃあ仕方ないわね。ダルクのせいってことにしときましょ」


「おい、それ本気で言ってんのか……。素材ごと焼き尽くしたような奴に言われる筋合いはないんだが」


「勘弁してよ……。魔族の国にいた虫はあんなに脆くなかったんだもの」


 パトラはそういうと、買取の書面にサインを書き込もうとして、何かを思い出したように手を止める。


「そうだ、ルー・ガルーの牙ってかなり本数あるわよね? これ合計で大金貨5枚ってなってるし、金貨10枚分はこちらが持って行っていいかしら」


「ええ、どうぞ。あとでこちらにお持ちいたします」


「ありがとう」


 パトラは書き直された買取書面を確認すると、今度こそサインを書いた。暫くして、パトラが持ち帰るといった牙が届けられる。全部で8本ある。それを今回の買取金額である大金貨14枚と一緒に受け取った。


「牙ってどうするつもりだ?」


「あら、知らないの? ルー・ガルーの牙って戦いのお守りになるのよ。ま、古い魔族の風習なんだけど、持ってて損はないかなあって思ってね」


「よく知ってるな」


「もっと褒めていいのよ」


 自慢げにそう語ったパトラをダルクは無視することにする。これ以上調子に乗らせるのはいけない気がした。それに対してパトラが不機嫌そうに睨んだが、ダルクはそれも黙殺しておいた。


「ところで」


 パトラとダルクがそんなことをしていると、いままで黙っていたミーアが口を開いた。


「あれほどの難関を抜けたのです。冒険者としての昇格があってもいいのではないかと思われますが」


「……そういえばそうね」


「それがですね、星4まではこなした依頼の数が昇格の判定になりますので……」


 そうなのだ。星4までは試験なしで昇格することが可能である。ただ、それは依頼の難易度にかかわらず、こなした数によって裁定されるのだ。星2になるためには依頼を3つこなさなければならない。つまり、遺跡の掃討とカリギュラの捜索という2つの依頼しかこなしていないダルクとパトラはまだ星1のままということになる。ミーアも星3にあがったばかりだったようで、昇格は先になるだろう。


「例外はないってことか……」


「いや、ないわけじゃないんだよ、これが」


 ダルクが落胆したように呟くと、その後ろから声が聞こえてくる。後ろを振り向くとそこにはジルが立っていた。

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