第19話 誘い
「久しぶり……というほど空いていたわけでもないかな。ともかく、君たちを待っていたよ」
ジルは三人に向かってそう言った。エレナとアキもいるのが見えるが、二人は少し離れたテーブルのところで座っている。
「待っていた……ってのはおいておこう。その例外がないわけじゃないっていうところ、詳しく聞かせてもらえるか?」
「もちろん。というか、それのために君たちを待っていたんだからね」
ジルはそういうと、懐から紙を三枚ほど取り出した。その紙はすべて同じ物だが、少し上質なものであることが見て取れる。
「えらく上等なものに見えるんだが、それは何だ?」
「簡単に言うと紹介状かな。星7以上の冒険者は実力のある新人を見つけた時、ギルドに紹介することができるようになっている。その紹介があれば、新人冒険者は星5認定の試験を受けることができるようになるんだ。本来は星4になってからある程度依頼をこなさなくてはならないところをショートカットできるんだよ」
「それはつまり、私達を紹介してくれるってことでいいのかしら?」
ジルの説明に、パトラが目を輝かせて食いつく。その押しの強さにジルは若干引き気味になっていた。
「も、もちろんそのつもりなんだけど……。そんなに食らいつかなくてもいいじゃないか」
「ふふーん、やっぱりあなた、話が分かるわ」
「先輩は敬うものだって言いたいところだけど、魔族の君のほうが年上だろうしノーコメントで」
ジルはそういうと、3人に紙を渡す。そこには昇格試験受験許可証と書かれている。名前の欄にはジルの名前とそれぞれの名前が記載されており、昇格試験を受けに来るようにといった旨の内容が記されている。
「と、言うわけで、君たちは星5認定の試験を受けることができる。だけど、試験を受けるにはこのランス国城下町のギルドではできない。なので、これから俺たちが拠点にしているギルドのほうに向かおうかと思うんだ。アキも実力は星5くらいはあると見ていてね。ついでだから案内もさせてもらうよ」
「なるほど、要するに囲い込みか」
「そういうつもりはないけどね」
「どうだかな」
ダルクは小さくそう呟く。正直に言うと断る理由はない。簡単……ではないとはいえすぐにでも昇格できるなら囲い込まれるくらいなら安いものではないかと考えている。なにより、ミーアはともかく、パトラは絶対受けるつもりでいるだろう。目を輝かせてやる気に満ち溢れたような様子を醸し出している。
「受けていいと思います、ダルク。拠点とするかどうかは置いておくとしても、試験が受けられるほどの大きなギルドに行くのは今後の活動にもプラスになるでしょう」
「昇格するチャンスを棒に振る理由はないわ」
「わかった、ジル、よろしく頼む」
「……ダルク、君も大変そうだね」
心配するようなジルの声に、ダルクはうるさいと返すことしかできなかった。
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