第17話 顛末

 遺跡を抜け出した後のギルドへの報告は滞りなく行われた。カリギュラ及び同行者二人の死亡、ルー・ガルーの存在、部屋の奥、そして刀、紫電陽炎。ルー・ガルーの死体をギルド前に運び込むようなことをしてしまったために相当な騒ぎにはなったが、それ以外は何もなかった。

 ジルとエレナ、そしてアキはルー・ガルーの討伐報酬の受け取りは辞退した。曰く、自分たちは討伐に際して何一つ役に立っていない、ということらしい。一応、なだれ込んでくる魔物の討伐はしてくれたのだから分け前くらいはとは思うダルクであったが、3人はそれを頑なに拒み、結局はルー・ガルー以外の魔物の討伐報酬を彼らで分けるということで話は落ち着いた。

 紫電陽炎も結局ダルクの持ち物ということで落ち着く。訳の分からない魔法もかかっていることだし、他の人にも渡すわけにもいかないというのが全員の本音だった。

 今回の依頼の報酬は受け取ったが、魔物の討伐に関する報酬については査定に時間を要するとのことで3日後ということになっている。どれくらいの金額になるかと言われても、ダルクには想像できなかったが、パトラに言わせれば素材を含めれば金貨が二桁は出るレベルなのだという。

 ギルドのほうはと言えば相当な混乱が発生していた。常駐冒険者の死亡は、たとえ危険度の少ない地域であったとしても問題である。どこかからそこそこの実力者の派遣を依頼するそうだが、相当難航するだろうとのことだった。遺跡調査ももう一度行うことになるとのことだったが、依頼の危険度を引き上げるらしい。ダルク達が行かなかった脇道まで調査するらしい。


 色々なことが一気にあって疲れ切ったダルクは、パトラと一緒にギルドの食事処にいる。ギルドが今回の報酬の一部として結構豪勢な食事を出してくれていた。


「冒険者になって間もないっていうのに相当な目にあったな」


「稼げたと考えればいいじゃないの。少なくとも私は、この街より大きな仕事ができる場所が探せそうでいいと思ってるわ。もちろん、ダルクと一緒にね」


「同意します。これからはあのバカといた時より充実した生活になりそうです。医者としての腕も振るえることでしょう」


 食事をしながら語りあうダルクとパトラの隣にはミーアもいた。

 カリギュラのパーティーにいた女性達のうち、アキとミーア以外は冒険者をやめることになっていた。絶対強者であると信じていたカリギュラの死は彼女達に恐怖を刻み込むには過剰なほどだった。それぞれがギルドに関連するような仕事をもらえたようだ。

 アキはジル達と一緒になるそうだ。あの現場で、恐怖からほとんど何もできなかった自分をもう一度鍛えなおすのだと言っていた。その決意は本物だろう。

 そしてミーアはというと、ダルク達に同行を申し入れてきた。遺跡調査時は医学の心得があると語っていた彼女だったが、同行に際して自分のことを明かしてきた。自分は狼の獣人であること、本来は医者であり、退魔と治療と強化の魔法が使えること、格闘技術で免許皆伝まで貰っていること、獣人の国から抜け出して冒険者に同行する医者として行動するつもりがカリギュラに誘われ、本来の思惑とは違う動きをさせられていたことなど、頼んでもいないのに喋っていた。結果として、ミーアは2人のパーティーに入ることになった。2人としても戦力の増強はありがたいことであった。何もそこまで喋らなくてもいいのにとダルクもパトラも思っていたのだが。


「まあ、獣人の医者ってあんまり見ないものね。珍しいわ」


「ええ。私は人族の国に来た際に見た医者に憧れ、志した身です。あの事がなければ私は格闘術の道場の師範代だったかもしれません」


 ミーアがなんとなく遠い、懐かしむような目をした。


「人生どう転ぶかなんてわからねえものだからな」


「ダルクが言うと説得力あるわよね。規格外の癖に軍クビになるとか、上の無能っぷりで笑えるわ」


「あなたを切るなど、救いようがありません。その軍の膿ですね」


「やめてくれ、聞いてるだけで胃が痛くなる」


「ハハハ」

「フフフ」


 パトラとミーアの含み笑いに、ダルクは苦笑いで返すことしかできなかった。



設定3 ダルク・オルレアン

 人族の青年。18歳。とある開拓村の出身で、魔物の襲撃に備えて剣をはじめとする戦闘術と魔法を学び、才能を開花させる。それを見初められ、ある分隊長(1話で土下座していたあの方)の手によって軍へと招集される。軍でもその実力を発揮させてはいたが、それを妬んだ貴族の手により、軍を出ることになり、そのまま冒険者となる。剣などの腕は軍で右に出る者なしとまで言われ、魔法でも素晴らしい実力を持つ。戦闘をしながら詠唱を行うという荒業を成し遂げるほどの集中力も兼ね備える。『天雷・剣技追従』は彼の切り札。

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