第14話 決着
ダルクは相手の状態を確認する。依然として怒りの眼を輝かせてはいるものの、今までの素早さはなくなっている。先ほどの氷魔法が相当効いたらしい。かなり深い傷ができていることから、もう雷撃は使ってこないだろう。パトラの魔法の影響で室内の気温もかなり下がっている。ダルクは剣を上に向けて胸の前で掲げる。
『我が身に奔れ、雷電』
「雷身強化」
そのまま雷属性の身体強化魔法を発動させる。一気にスピードを上げ、ルー・ガルーへと切りかかる。相手はろくにかわすこともできずにそのまま切られる。たいしたダメージにはなっていないように見える。ダルクはさらにスピードを上げ始める。パトラの魔法で傷ついたところを中心に狙っていく。ルー・ガルーがこちらのスピードについていけなくなっていることを確認したダルクは、剣を握り直し再びルー・ガルーへと迫った。そして、
『天より疾る、神々の怒り
我が敵を刈る天の一撃』
詠唱を始めた。高速で敵に斬撃を加えながら。
「え……?」
パトラにはそのことが一瞬理解できなかった。そして理解すると同時に驚愕する。
詠唱魔法にはあるデメリットがある。途中で詠唱が止まると暴発する危険性があるのだ。そのリスクは大型の魔法になればなるほど上がる。そのため、長い詠唱を必要とする魔法は集中できる状態で後衛がするのが普通である。
それをダルクは今、高速で相手に攻撃を加えながら行っている。平行詠唱。そんなことができるような人物を、パトラは今まで見たことも聞いたこともない。古い伝承で読んだことがある程度でしかなかった。
はっとしたパトラは万が一に備えて、魔法障壁の準備を始める。
『恐れよ、これが神の御業也
恐れよ、これが雷帝の怒り也
恐れよ、万象
恐れよ、生命』
詠唱の言葉が紡がれ、ダルクの魔力が増していく。ルー・ガルーもなされるままというわけにはいかないのか、ダルクに対して爪の攻撃を行う。その攻撃を紙一重でかわし、爪に追加の攻撃を加えながらも、ダルクの詠唱は止まらない。
『これより放たれるは滅び也
すべからく我が敵を葬らんとする神よりの怒り
剣を受けしものを焼く殲滅の声也』
ここまで詠唱しつつ切り続けていたダルクは、さらにスピードを上げる。ルー・ガルーの攻撃はもはやダルクの身に着けているマントすらとらえることができなくなっている。それでもダルクは攻撃の手を緩めない。詠唱も止めない。
『恐れよ
畏怖せよ
絶望せよ
落つる天雷にて身を焼くがいい
我が剣のもとに疾れ、雷撃!!
怒りよ、迸れ!!』
「天雷、剣技追従!!」
詠唱の完成と同時に、ダルクはルー・ガルーの後方へと駆け抜けた。身体強化魔法はもはや維持できず、強制解除され、その反動で膝をつく。その後ろ姿をルー・ガルーが追撃しようと爪を伸ばしたその瞬間だった。
轟音とともに雷撃が発生した。ルー・ガルーの体のあちこちから強烈な電撃が発生し、そのままルー・ガルーまでもを焼き尽くさんと迸る。その雷撃はダルクのつけた傷から、体内に入り込み、耐性のない内臓まで達する。
「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!」
致命的な攻撃に、ルー・ガルーが苦痛の叫びを上げる。それでも雷撃は止まらず、ルー・ガルーはその身を内側から焼かれ続ける。やがてその叫びすら小さくなっていき、最後には聞こえなくなる。
大きな音を立ててルー・ガルーが地に伏せる。発生していた雷撃もようやく収まる。
かくして、ルー・ガルーは絶命した。
それと同時に、奥に扉が出現した。
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