帰寮~ぬいぐるみ~

 バスと電車を乗り継いで、俺たちは学生寮へ帰ってきた。


「水無瀬さん……学校へは来ないの?」


 クラス委員長である勅使河原が、訊ねる。


「不良の一件も片づいたし、気が向いたら行こうと思う」


 そうか……。水無瀬が学校に来なかったのは、DQNが不穏な動きを見せていたから監視するという意味もあったのか。


 今回の騒動でここら辺のDQNは壊滅したも同然だし、これで普通の学生生活を送れるかもしれない。


 DQNが片付いた今、俺がやることは……期末考査をしっかり受けることぐらいだな。受けてさえいれば、退学にはならないだろうし。シンクロ率は地道に上げていけばいいだろう。


「私は世界征服を諦めたわけではないですよ。修練を積んで、必ず、水無瀬氷を超えてみせます」

「そう……」


 美涼のそんな発言にも、水無瀬は無感情だった。


「なんだかよくわからないけど、妹子はお兄ちゃんのこと大好きー☆」

 いつもの調子に戻った妹子が俺に抱きついてくる。これでこそ、我が妹だ。もうこのまま妹子とイチャイチャしていればいいんじゃないかって気もしてくる。


「……ともかく、永遠は期末試験に向かってもうちょっとがんばりなさいよ。私も手伝うから」

「ああ。やっぱり、高度な魔法を使いたいからな」


 公園で出したような炎竜飛翔を常時使えるようになるのが、当面の目標だな。

 そんなこんなで散会となり、こちらに来ての初めての週末は終わった。


「あ、そうだ……」


 一足先に水無瀬が寮に戻ったところで、勅使河原は買い物袋からぬいぐるみを取り出した。


「これ……よかったら」


 ああ、あれは……美涼の分って言って獲ったウサギのぬいぐるみか。


「は? 私にですか?」


 差し出されたぬいぐるみに、美涼は驚いたような表情を浮かべる。


「UFOキャッチャーで取り過ぎちゃったから、その、よかったら……べ、別にいらないならいいけどっ!」


 美涼はウサギと勅使河原を交互に見つめていた。どうするべきか、迷っているようだった。一応、勅使河原を敵視していたわけだからな……。ここは、どうするのか。俺としては、当然、仲がいいほうがいいのだが。


「し、しかたないですね……それじゃあ、もらってあげますよ…………その……ありがとうございます」


 最後に小声でお礼を付け加える美涼。まったく、素直じゃないな……。

 でも、ちょっと顔を赤くして嬉しそうにも見える。


 これをきっかけにして、少しでもふたりの仲がよくなればいいと思う。やっぱり争っている姿というものは見たくないものだ。俺の作り出したキャラたちだしな。


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