終章 いつかまた、この小さな庭で⑨

「こ、こんなえっちなお店……ふーぞくで働いてるなんて!? 会長も副会長も、見損ないましたよ。停学です、停学っ!?」


 初心うぶな先生が赤くなったままなので、替わりに会計の眼鏡っ子が目を回しながら怒鳴る。

 同じ生徒会の千歌流ちかる季紗きさがひそひそ内緒話。


「やけに絡みますよね。同じ生徒会メンバーなのに……」


「きっと私たちのことが好きなんだよ。ふふっ♪」


「そこ! 聞こえてますよ!?」


 赤くなりながら、ずり落ちた眼鏡を直す……なかなかのツンデレである。


「と、とにかくっ。女の子同士でキスしたり、触り合ったり……ちゅーしたり! こんな、こんなイケないお店、私は認めませんからね! 伝統ある秋芳しゅうほうの、せ、生徒会長が。よりにもよって、えっちなお店でなんて!」


 肩で息をする女の子。

 本気の拒絶を示されて、いつもなら「ふーぞくじゃありません。乙女の聖域です!」で押し通すリズさんも、あわあわ困ってる。


「えっち! 変態! ……ばかっ!」


 過呼吸気味に真っ赤になってののしる女の子へ、季紗が心配して手を伸ばすけど。


「近寄らないでください!? わ、私のコトも襲うつもりなんでしょう、え、えっち!?」


 照れ隠しでなく嫌がられて、ショックを受けてる季紗の表情を見て……。


 由理の中で、何かがプッツンした。


「……なによ。えっちで何が悪いってのよ」


 元祖ツンデレ百合メイド、腕を組み、そっぽを向くツンデレポーズで、今、思いの丈を。


「そうよっ。『リトル・ガーデン』はえっちなお店です! 女の子同士ですっごくディープなキスしたり! いっしょにお風呂入って泡塗れになったり……にょ、女体盛りだってするんだからぁ!」


「認めちゃったぁ!?」


 季紗が驚くけれど、もう止まらない。


 乙女の友情とかスキンシップとかオブラートに包んできたけれど、百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」で行われているのは、かなりイケない度の高い……ふーぞくみたいな行為であると。

 由理は認めて、認めてそれでも。


「で、でも、しかたないでしょっ。だって、だって……!」


 その季紗の頬を両手で挟んで、由理は。


「こういうの……好きになっちゃったんだからぁ!」


 ……ちゅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ♪

 お店中に見せ付けるみたいに、舌を深く挿入する、えっちな百合キスをした。

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