バレンタイン編⑨ お口直しに百合キスはいかが?

 女の子同士でチョコの口移しをする、百合メイド喫茶の聖バレンタインデー。

 百合メイド同士で、あるいはお客様達と、いっぱい百合キスしたせいで由理ゆーりは……。


「うぅー、お口の中、甘ったるい……」


 苦かったり甘かったりのチョコよりも、少女唾液で甘ったるい……。

 キスの甘さで鼓動が激しくなりすぎて、鼻血が出ちゃいそうなのです。


「ねえ、季紗きさ。なにか口直しのとかない?」


「あ、ハーブティ淹れてあるよ。ほんのり苦味を効かせた、爽やかハーブティ!」


 それもらおっかな、という由理へ、季紗はにっこにこ微笑んで。

 自分の口に含んで、キス待ち体勢に入った。


「んー♪」


「いやいやそうじゃなくて」


 ロングヘアでアイドルみたいに可愛い季紗の接吻おねだりでも、由理さんの要望とは違うらしい?

 季紗、ごっくんと紅茶を飲み込み、首を傾げる。


「あ、私とはさっきキスしたものね。じゃあリズさんと口移し?」


  季紗が手を挙げ、リズさんを呼ぶ。


「リズさーん、由理が口直ししたいって」


「あら、じゃあ紅茶の口移しね!」


 リズさんも自分で紅茶を含んで、キス顔だ!


「だ、だからっ、口移し以外にないのぉぉぉぉ!?」


 赤くなる由理だけど、季紗もリズさんも「え? なにか変?」って、きょとんとしてる。

 キスし過ぎでリフレッシュしたい由理だけど、その気持ちは伝わらないようで……。


「も、もういいや。キス、する……」


 観念して、リズと季紗から、ハーブティの口移しをしてもらった。


「……んふっ、ちゅぱっ。くぷぬ、むぷん……。ちゅ……ふぁ」


「ちゅっ……ちゅっ……♪ ちゅっ……♪」


「ふ……うぅん♪ ぬぱぁ……ぷちゅっ……♪」


 とろとろ淫靡な蜜みたいな、泡立つ唾液といっしょに、直接マウストゥマウスで注ぎ込まれるハーブティ。

 清涼感のある程よい苦味が、チョコレートの味を洗い流してくれる……けど。


「ちゅぷっ♪ んぱっ、ぐっぷん♪ ふぁ、こ、これじゃ……もっと百合キス、したくなっちゃうぅ……♪」


 由理の求める口直しでは、ないみたい。

 結局、微熱みたいなえっちな気分に浮かされたまま、夜まで百合接吻を続けるのでした。

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