「リズ=ノースフィールド」編③ 憧れを胸に抱いて

「ふぉぉリズねえ可愛いー♪ こっち向いて! そこでポーズ!」


「あ、あんまり写真撮らないで。恥ずかしい……」


 金髪碧眼にゴスロリが似合い過ぎなリズさん、カラダはロリじゃないけど、とにかく可愛い。

 そんなリズさんを、お揃いゴスロリ衣装な美緒奈みおなが、スマホで撮影していた。


 ちなみにここは……。


「ふへへ、いいね、いいねー。次はリズ姉、スカートまくり上げてみよっか♪」


「や、やりませんっ、こんな街中で! ……街中じゃなくても、やらないけど」


 道行く大勢の人の視線に、頬を染めるリズさん。


 ここは、東京の大都会ど真ん中。

 池袋の東口駅前なのだった。


「いやー、リズ姉とペアルックでデートとか、テンション上がり過ぎちゃってさ。今日はいっぱいイチャイチャしようね♪ 一番手だからって容赦しねーぞ♪」


「お、お手柔らかにね……?」


 本日のテーマは、「池袋デートで、リズさんの思い出作り」。

 季紗きさの発案で、美緒奈、季紗、由理ゆーりの順にリズさんとデートして、百合キスして、誰がいちばんリズさんをときめかせるか競うことになった。


「なぜに勝負……?」


 小首を傾げるリズさんの手を引いて、まずは美緒奈が、池袋の街へと繰り出した。


「細かいことは気にしない♪ さ、デートだぜデート♪」


 ※ ※ ※


「この本をあたしと思って……大事にしてね♪」


「ぜ、ぜんぶえっちな本ー!?」


 美緒奈がリズさんを連れていったのは、池袋東口の老舗洋菓子店タ○セに、ビック○メラカメラ館のすぐ近く、同人誌ショップとら○あなである。


「ふぇぇ、えっちな本ばっかりだし!?」


「む、違うよ一般向けもあるよ? 半分はエロだけど!」


 池袋とらの○なは、男性向けの館と女性向けの館に分かれているが……美緒奈が来たのは、もちろん?男性向けだ。


「美緒奈様おすすめの、エロっエロでレズレズなサークルの同人誌だよ♪ リズねえ18歳以上だから、セーフだよね!」


「美緒奈ちゃんはアウトよね? そ、それより……」


 ぼっと赤くなりながらもエロ本読んじゃうリズさん。


「な、なんだか……美緒奈ちゃんみたいな髪型の子が多いような?」


「うん、狙ってみた! リズ姉もその本で、いっぱいエロ妄想していいかんな♪」


「税関通るのかしら……?」


 こうして日本のポルノは、海外へ輸出されていくのです。


 さて、エレベーターを降り、お店を出た後。


「あとはね、リズ姉。これ……家から持ってきたプレゼント」


 美緒奈が頬を染めながら、DVDくらいのケースに入ったものを差し出す。


「あたしが大、大、大好きなゲームと、そのドラマCDね。宝物にしてくれたら、嬉しいな」


「これも18禁のマークがあるわね。そ、それより……」


 二人の女の子がイチャつくパッケージを見て、リズさん真っ赤に。


「こ、この子たち……私と美緒奈ちゃんに似てない?」


 金髪巨乳の女の子と赤毛ツインテールの女の子が、制服をはだけむつみ合うパッケージなのだった。

 タイトルは、「その花びら○くちづけを」(無印)。


「七海に優菜ね。その子たち、すっごい百合えっちするんだぜー♪」


「ひゃわぁ!?」


 Hシーンがばっちり載ったパッケージ裏面を見て、リズさん危うくケースを落としそうに。


「あ、新手のセクハラ……?」


「ひどっ!? あ、あたしは純粋に、大好きなものをリズ姉にもと……!?」


 こほん、と咳払いする美緒奈。

 池袋の街中で、リズさんに向き合って。


「……そのゲームではね。ツインテの女の子は金髪の方のお姉さまに憧れてるの。でも、実はすっごいエロ乙女だってのを知っちゃって……けれど、やっぱり好きで」


 にひひ、と照れ笑い。


「あたしもさ、『リトル・ガーデン』には制服目当てだったから。最初は、リズ姉や季紗姉がキスしまくるのを見て、『なにこの変態』とか思ったわけよ」


 ショックを受ける顔も可愛いリズさんに、美緒奈は抱きつく。


「でも……好きになっちゃった。リズ姉は優しいし、料理も上手だし、あたしの憧れなんだ」


 照れながらリズさん、困ったみたいに、


「……私、憧れるほどの子じゃないわよ? けっこう泣き虫だし、寂しくなるとダメだし」


「うん、知ってる。でも、そこも可愛いの♪」


 美緒奈は、にこっと笑い、リズさんを見上げた。


「季紗姉も由理も大好きだけど……あたしの『お姉さま』は、リズ姉だけかな」


 愛の告白みたいな美緒奈の言葉。

 貴女に、憧れてるとの言葉に、リズの胸に熱いものが広がる。


「……うん、嬉しい。美緒奈ちゃん……美緒奈が、私の背中を見てくれてるって思ったら、がんばれるかな」


 見つめ合って、ふふ、と笑い合う乙女たち。

 確かな絆を感じたなら、彼女たちの場合、もちろんすることは……?


「……キス、しよっか♪」


「ま、街中よ、美緒奈? みんな、見てる……」


 羞じらうリズへ、美緒奈が背伸びして。


「いいじゃん、見せつけちゃおうよ。ね……お姉さま♪」


「ちゅっ♪ ん、むちゅぅー♪」


 東京の真ん中で、百合を叫ぶ少女たち。

 熱く深く唇を重ねる彼女たちの絆は、ゲームの百合ップルにだって、けして負けない。

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