「南原美緒奈」編②

 日付をさかのぼって、季紗きさの告白直後。


「こ、恋っ……!? 好きって、ええぇ!?」


 勇気を出して告白した季紗よりも真っ赤な顔で、由理ゆーりが羞じらう。

 動き易くセミロングに切り揃えた髪の、ツンデレメイド由理……人にデレられると弱い?


「そ、それって。わ、私と……その、恋人になりたい、的な?」


 あわあわしながら尋ねる由理へ、季紗はにこっと微笑み、軽く口づけた。


「……ちゅっ♪」


 そのまま、柔らかな微笑を浮かべ、耳元に囁く。


「そうよ。えっちなコトとかもしちゃう関係に♪」


「……!!」


 季紗に抱き付かれて、由理の頬が今までにないくらい灼熱。

 でも。


「そ、そんなこと、いきなり言われても……こ、困るよ」


「……由理は、私とえっちするの、いや?」


 濡れながら燃えるような季紗の瞳が、近い。

 視線の鳥かごの中で、由理が混乱するように首を横へ振る。


「分かんない。分かんないのっ……キ、キスは、好きだけど……」


「そっか。……うん、今はそれでいいよ」


 季紗はそっとカラダを離し……と思ったらキスしてきた。


「ちゅっ♪ むはん……くぷぅ♪ んー、むぅん。ふぅ……っ♪」


「ふぷぅ!? んぶっ……ずぷんっ!? や、やだぁ、あんまり、激しく……っ」


 激しくしないでぇ、と、由理が季紗の背中を叩く。

 その唇を堪能して、唾液を舐め取りながら。


 あくまで背景には清らかな百合の花を背負ったままで、季紗は微笑み、可愛らしくウインクした。


「返事は、待つよ。でもね、キスは変わらず毎日してくれたら……嬉しいな」


 ※ ※ ※


 その日から由理は、絶賛大混乱中。


「す、好きって……本気の恋愛って。えぇぇ女の子同士だよ私達!?」


 毎日キスしてるのに何を今さらだけど、それだけ由理が動揺してるのです。


「……毎日キスなんて、恋人でなくちゃ普通しないか?」


 健全なお店「リトル・ガーデン」といえども、女の子同士晴れの日も雨の日も接吻してたら……愛が芽生えちゃうのも不思議じゃない。

 ようやくその事実に気付く由理。


「ああもうっ!? 明日からどんな顔して、キスすればいいのよぉぉ!?」


 キスで甘く脈動する心臓へ戸惑い、唇をなぞりながら。


「……美緒奈みおなやリズさんは、何を考えながらキスしてるのかな?」


 ※ ※ ※


 さて。

 2人のうち1人……リズさんはというと。


 仕事お休みだった彼女、意外な趣味の魚釣りから、帰ってきてさっそく。


「ただいま、由理。お姉さんにお帰りのキスしてね♪ ……ちゅっ♪」


 豊満な胸に由理を埋もれさせて、キスしてきた。

 なんとも日常のスキンシップじみた、軽やかなキス。


「ふぁ……やっぱりリズさんのおっぱいに挟まると、落ち着く……♪」


 母に甘えるように安らかな表情で、由理はリズの乳に頬擦りし、揉んだ。


「ふぁぁ、んっ♪ こ、こら。むにゅむにゅしちゃらめぇ♪」


「癒されるー。リズさんの胸は、やっぱ『リトル・ガーデン』の癒しだよ♪」


 おっぱいセラピーでヒーリングされつつ、由理は考える。


 情熱的な、季紗のキス。癒される、リズさんのキス。

 ……じゃあ、美緒奈は。美緒奈とのキスは……?

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