「南原美緒奈」編①

美緒奈みおなちゃん、私ね……由理ゆーりに、告白したの」


 閉店後の百合メイド喫茶にて。

 季紗きさから聞かされた時、美緒奈は動揺を隠せなかった。


「へ、へぇー。き、季紗ねえ、由理のこと好きだったんだ?」


 赤毛ツインテールの髪先を指でくるくる弄りながら、何でもないふりをする。

 それでも、聞くのが怖くても……尋ねずにいられない。


「へ、返事は……由理はなんて?」


 メイド服を着たままの季紗、じっと美緒奈を見つめた後で。


「まだ、聞いてないわ。私の方から、保留にしてもらったの。だって……」


 メイド服の美緒奈へ、すっと距離を詰めて。

 頬に、指で触れる。


「美緒奈ちゃんが、気持ちを伝えてないもの」


「ふにゃぁぁ!?」


 どくんっ。

 心臓が、頬へ血液を送り出すのを感じる。

 季紗には、全部ばれてる。


「べ、別にあたしはっ!? い、意味わかんねーし! 宇宙のアイドルでプリティロリ女神な美緒奈様が、由理なんかに……!?」


「嘘。だって私、美緒奈ちゃんのことも……見てたんだよ」


 季紗の瞳が熱っぽく潤んで、美緒奈の頬を掌で挟み……口づけてくる。


「……ふぅっ、んぷぅ。ちゅぷぁ……ぬぷ」


(なぜそこでキス!?)


 濃厚百合キスで口内に侵入してくる季紗の舌に、美緒奈動転。


(き、季紗姉が告白したのって、由理にだよね!? なんであたしにキスするのぉ!?)


「ぷぁっ、ふ……ぅあんっ♪ や、ちゅぱぁ……♪」


 でも、さすがに百合キスが天才的技巧テクな季紗の接吻。

 美緒奈は気持ち良くなっちゃう。


 そんな美緒奈と銀糸を交わしながら、季紗。


「ちゅぱぁ……♪ 私ね、美緒奈ちゃんのことも、大好きなんだよ」


 真剣な表情で、言い切った。


「だから、ちゃんとぶつかりたいんだ。美緒奈ちゃんが気持ちを押し殺したりしないで……由理に好きって言って。それで私が振られても、美緒奈ちゃんが本気を出してくれたなら……きっと、祝福できる気がするの」


「だ、だからっ。あ、あたしは由理のことなんて……!?」


 かぁぁ、と頬を赤く染めて美緒奈。

 視線を逸らそうとするけれど。


「嘘!」


 季紗に、またまたキスされた。


「んちゅぅー!? む、ぐぷぅぅ……っ」


「ちゅぱぁ♪ ずちゅっ、ぐぷくぷぅ♪ ふっ、んくぅー♪」


 2人、発情した犬みたいに舌を出して。

 ピンクの濡れた舌を、季紗の唾液がとろりとしたたり落ちて、美緒奈の喉へ墜ちる……淫靡な光景。


「ふぁ、ぷぢゅぅ……ぷぁっ。ね、ねえ、美緒奈ちゃん?」


 激しいキスに季紗もドキドキしてるのか、心音がメイド服越しに伝わってくる。


「ホントのことを言って。も、もし、このキスが、由理とだったら……どう?」


 キスしながらの、季紗の真剣な質問に。

 美緒奈、つい想像しちゃって。


 耳まで真っ赤になって、八重歯の覗く唇を震わせた。

 ツインテールが心臓と一緒になって飛び跳ねる。


 由理と恋人キスできたら……きっと、嬉しいなって。


「にゃぁぁぁ!? だ、だからあたしは!? 恋なんて、してないってぇぇぇ!?」


 南原みなはら美緒奈、素直な自分へのなり方が、まだ分からない。

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