「南原美緒奈」編③ もしかして、脈ありですか?

 12月の百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。

 クリスマスを前に、百合メイドたちは……。


「ちゅっ……んっ。む……ふぅぅ……♪」


「ぷぁ、ぴちゅぅ♪ ちゅっ、ふ……♪」


 ケーキ口移しの練習に余念がなかった。

 リズと季紗きさが抱き合い、チョコレートケーキを仲良く接吻シェア。


「ちゅぱぁ、ずぷん。じゅぶっ、んぷぅ……♪ ど、どうかしら、季紗。甘さ控えめな、大人の味にしてみたのだけど?」


「んぷは、ちゅぶっ……♪ ずっぷ、ずっぷ♪ ええ、甘ぁい百合キスにほろ苦ケーキがアクセントで、とても美味しいです。ちゅぅぅ……♪」


 これはお仕事です。

 金髪縦ロールメイドのリズさん、にこにこキスしながら、


「クリスマスはいっぱいお嬢様が来るものね。色んな味のキスが出来るように、ケーキの種類も揃えなくちゃ。チーズケーキも口移し試しましょ。……ちゅぅぅ♪」


 繰り返すけど、これはお仕事です。


 他にも今日は、非常勤の百合メイドたちもやってきて、それぞれに百合キス。

 口移しに合うケーキをみんなでチェック。


 そして。

 開店前のお店中にちゅぱちゅぱリップ音が響く中、向かい合って赤くなるのは新人2人。

 ロングヘアでつり目なメイド、たつみ千歌流ちかるに、来年高校生になったら百合メイドになる予定の、小柄な女の子、前園まえぞの円美まるみだ。

 まだ中学3年の円美ちゃんも研修ということで、メイド服着用。

 幼い和風メイドという風情で、愛らしい。


「ゆ、由理ゆーりお姉さま以外の方とは、キスに慣れてなくて。その……は、恥ずかしいです」


 赤面してうつむく円美に、千歌流も負けじと頬を染めながら、


「ば、ばかっ。私だって恥ずかしいけど……お仕事だもの、ちゃんとやらなくちゃ」


 季紗の後輩で風紀委員でもある千歌流、百合キスにも真面目。

 円美の頬を掌で包み、苺のショートキスを口に含んで、


「い、いくわよ。……ちゅぅぅぅ……っ」


「んむぅ……ん。ふ、むぅぅ……っ」


 キス自体に不慣れな2人、なんだか苦しそうだけど。

 一生懸命唾液を絡めあって、苺をお口の中でペロペロします。


「ん、ぷぁ♪ ちゅぷぁ、し、舌が♪ んふぁ……♪」


「ちゅぁ、ちゅぷぅ♪ や、やぁっ♪ き、気持ちいいからって、私の腕に爪、立てるなぁっ♪」


 将来有望な、後輩たちの百合キス。


 ※ ※ ※

 


 さて、この2人はというと。


「……」


「……」


 赤毛のツインテールを黒リボンで結った、ロリメイドの美緒奈みおなに。

 動きやすいセミロングの由理。

 頬を染めて、向かい合いながらもじもじ。

 意識しちゃってるのが、明白です。


 由理、覚悟を決めたみたいに、


「こ、これはお仕事。お仕事、お仕事……」


 自分に言い聞かせて、甘酸っぱいラズベリータルトのお皿を手にとる。


「じゃ、じゃあ美緒奈。私達も、百合キス口移しするわよ……?」


「ま、待って」


 美緒奈、羞じらいながら、こんな冗談を。


「今日、あたし危ない日だから。キスしたら赤ちゃんできちゃう……」


「どこで覚えてくるのよ、そんなセリフ。……エロゲか」


 ツッコミどころだらけなセリフに、由理照れながらジト目。


「ほ、ほらっ。キスしないとお仕事にならないんだから。さっさと、するわよ」


 なんだかキスしたい人みたいになって迫る由理に、美緒奈は内心嬉しくて、ツインテールがぴょんぴょん跳ねる。


「へ、へぇー。由理ってば、そんなにあたしとキスしたいんだー♪」


 八重歯覗かせ小悪魔スマイルでからかってやると……。


「ば、ばかっ」


 由理が否定しないので。


(あ……もしかして、あたしも、チャンス有るのかな)


 甘い熱が全身を駆けめぐるのを感じた。


 美緒奈は、ゆっくりつま先立ち。幼いカラダを、由理の胸に預けて。


「……ちゅっ。んっ、ふぅ、ふぅっ! んー、むぅ♪ んぷ、ちゅむぅ♪ ぐぶっ、ぬぅ……ん♪ ふぅっ、ちゅぱぁっ……♪」


「ぐぷぅっ!? ずむっ、ふぅー……んんっ♪ くっ、んく……んくぅ♪ んあぅ、ふぁぁ……♪」


 百合メイドたちは皆、2人ひと組でケーキ口移し。それぞれの世界に没頭中。


 美緒奈と由理も、頭の中までが、唇と唾液の……少女の蜜の味で蕩けるまで……ずっぷ、ずちゅうと唇を吸い合った。


「ふぁん、ちゅ、ぷぁぁ……っ♪ ん、ふぅー、ふぅー……っ♪」


「んぱっ、ちゅぶぅ♪ ぐぱぁ……ずちゅるぅ♪ ちゅ……ふぅ、ふぁぁー……ん♪」


 ……そして。


 いっぱい百合キスした後で、由理がハァハァ息を荒げ、顔を真っ赤にしながら。


「ば、ばかっ。私まだ、ケーキ、口に入れてない……。試食に、ならないってばぁ……」


「ん……唇が甘過ぎて、気づかなかったぁ……」


 てろーんと唾液の銀糸で舌を繋ぎながら、2人は乙女の羞じらいで視線を逸らすのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る