百合フェスりたーん
『すき……すき。好きっ……』
ちゅぷっ、ずぷぅ。ぢゅぷぅ、ぬるっ……。
熱に浮かされたように
砂漠を歩く旅人が水を求めるように、貪欲に、必死に唾液を貪りながら……。
「仕事中に何を読んでるのよ、
「にゃぁぁぁぁ!?」
夜、閉店時間近くの百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。
今日はお客様の引きも早く暇になったせいか、美緒奈がカウンターで漫画を読んでいた。
「べ、べつに遊んでるわけじゃねーぞ。あたしは今日買ってきた百合同人誌を読んでだな、お客様を喜ばせる百合キスを、研究してたのだ!」
口元に八重歯をちらりと覗かせて、えっへんと薄い胸を張る赤毛ツインテールのロリメイド美緒奈。
今日はお昼に、百合オンリー同人誌即売会「百合フェス」に行ってきた彼女、現在戦利品(同人誌)チェック中。お店で。
「このにこまき本萌えるわー。ツインテールのせいか、ちょぉっと自分を重ねちゃうぜー」
同人誌の表紙を見せながらデレっとする美緒奈へ、
「あれ、右上にR18とか……」
「見間違いだってぇ♪ こんな可愛い絵で、えっちとかするわけねーじゃん」
問題の無いページだけ開いてみせる美緒奈。
ホントはラブ○イブの18禁百合同人だけど、由理には内緒。
夢見る乙女な表情で、うっとりとトリップしながら。
疼く自分の唇に、指でそっと触れる。
「いいなぁ、あたしも、こんなキス、したいなぁ」
美緒奈が読んでいるのは、廃校が決まった学校を立て直すべく女の子達がアイドル活動するアニメの、えっちシーン有りな同人誌。
「好きって囁かれながら百合キスされたら、美緒奈様、墜ちちゃう♪ ロマンティックだぜ♪」
漫画の中では、愛し合う百合ップルが愛を告白しながら、学校の中で唇と肌を重ね合うのだ。
ドキドキ、その
由理、むっとした顔で腕を組む。
「なによ、私といつもキスしてるのに、物足りないって感じじゃん」
「あっれぇー♪ 妬いてるのかな由理ちゃんは?」
美緒奈様嬉しそうに小悪魔スマイル。
「べっ、別に? ただ、そのぉ……私とのキスがロマンティックじゃないみたいな言い方だし」
こっちはドキドキしてるのに、美緒奈はしてないの?……と。
聞こえないくらいか細い声で、羞じらいながら抗議する由理へ。
「えへへぇ、やっぱり妬いてるだろー♪」
抱き締めたくなる天使の笑顔で、美緒奈が頬を染めた。
「じゃぁさ……」
甘く蕩けるアニメ声で、桃色の雰囲気を作り出す美緒奈。
ほんのりと色づいた唇を、かすかに震わせて。
「さっそく、キスのレッスンしようよ。この同人誌よりあたしをドキドキさせたら、合格ね」
由理へ、キスをねだった。
「ね……? あたしに、『好き』って言いながらキスしてみて……?」
「な、なによそれ。恥ずかしいってば……」
赤面しながら視線を逸らす由理に。
美緒奈は上目遣いで迫り、熱い吐息を……。
「ほら、これはお仕事。お客様をもっとロマンティックな気分にさせるための、レッスンだから、ね?」
だから、いっぱいキスして?
美緒奈の、恋する乙女の表情が、あまりに近くて。
由理もドキドキしながら、美緒奈の頬へ指で触れて。
唇を、近付けるのだった。
「……そうね。これは、キスをうまくするレッスン、だものね」
……ちゅぅ♪
キスする理由をつくってあげれば、墜ちちゃう由理。
キスをして、唾液の銀糸を交わして。
熱く濡れた瞳に、美緒奈の顔を映しながら。
「……美緒奈、大好き」
とくん。
再び重なる唇の熱に、美緒奈の鼓動が暴れる。
好き、じゃなくて、大好きなんて、由理が言うから。
ほら……やっぱりあたし、墜ちちゃったじゃん。
そんな美緒奈のつぶやきは、唇と唇が奏でる水音が、隠してくれるのだった。
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