世の中に かほど やらしき ものは無し ちゅっちゅちゅっちゅと 夜も寝かさず

「うわぁぁん美緒奈みおなちゃん! に刺されたよぅ!」


 9月、残暑の季節。

 ある日の百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」に響く、メイド服姿の季紗きさの悲鳴。


「泣くなよ季紗ねえ。大げさなんだから」


 呆れながらも、ツインテールロリメイドの美緒奈は、塗り薬を持ってきてあげる。


「ほら、どこ刺されたの。見せてみなって」

「ううぅ、耳の裏……」


 うるうる瞳を潤ませる季紗。

 頬を赤らめて、清楚乙女のポーズでおねだりしてきた。


「……舐めて冷やして? キン○ンより美緒奈ちゃんの唾液の方が効くよ♪」

「えええ、あれやるのぉ? 普通にお薬塗った方がはえーのに」


 そう言いつつ、付き合ってあげる美緒奈。季紗の無茶振りには慣れているのです。

 季紗の斜め横、少し後ろから抱き付いてあげて……ちょっぴり背伸びして。


「……かぷぅ♪」

「んふぁぁ……♪」


 美緒奈に耳たぶを甘噛みされて、季紗が気持ち良さそうな吐息を漏らした。

 甘噛みの刺激で、かゆみをやわらげてあげる高等テク。

 そのまま蚊の毒を吸い出すように耳裏へキスしながら、


「ぺろっ……ぷちゅぅぅ……♪」


 季紗の耳を舐めて、唾液を塗ってあげる。そこへ美緒奈が、美少女桃色吐息を吹き掛ければ、


「ふぅっ……♪」

「や、やぁん♪ 息爽やかで冷たぁい♪」


 実はこれ、「リトル・ガーデン」に昔から伝わる、蚊に刺された時の治療法。

 耳をペロペロして唾液で濡れたところへ、息を掛けてあげることで、蒸発する唾液が蚊に刺された部位の熱を連れて行ってくれるのだ。

 名付けて気化熱ペロペロ法。なんて合理的……!


「んぁぅ、気持ちいい……♪」


 頬を染めてぶるっと震える季紗。

 耳の痒みは引いたみたい、なのだけど。


「ふふっ、美緒奈ちゃん? 私、他のところも蚊に刺されちゃったかも♪」


 瞳の奥に発情ハートマークを浮かべて、今度はなまめかしい唇を押さえるのだった。


「うぅ、痒い気がするよぅ♪ ね、貴女のキスで癒して♪」


 自分で唇舐めながら、キスのおねだり。

 美緒奈もエロ百合乙女なので、小悪魔スマイルで、悪戯に乗った。


「にひひ、季紗姉ったら、えっちなんだぁ♪」


 ちゅぷぅ、と唇を奪い、舌の裏まで舐めてあげて。

 桃果汁みたいに甘い唾液をごっくんしつつ、ロリ顔に妖艶な笑み。


「蚊に刺されたの、唇だけなの季紗姉? 胸とか、ここも、でしょ……♪」


 季紗のメイド服スカートへ、美緒奈が指を……これ以上は描けない!!

 秋の百合メイド喫茶に、ちゅっちゅぱちゅっちゅと……吸血みたいな水音と喘ぎ声が流れるのでした。


「ぜんぶ……蚊のせいですぅ♪」



【後書き】

季紗「ところで知ってる? 血を吸う蚊はね、ぜんぶメスなんだって。産卵にエネルギーがいるから、血を吸うらしいよ。つまり……女の子♪」


美緒奈「いや、さすがに昆虫には萌えねーよ……」

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