「初めて」捧げられました①

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」から乳成分が減って3日目。

 バイトリーダーでもあるリズが帰省中で不安もあるけれど、なんとか無事に営業中です。


 赤毛ツインテールの美緒奈みおな、ロリロリ妹系演技で甘ったるい声を上げながら、OLのお姉さんに唇を吸われてる。


「にゅぷっ、んんっ♪ えへへぇ、お姉さまったらぁ♪ そんなに美緒奈の、美味しい?」

「ん、ちゅぅ……。ずぷっ、んむぅ……♪ ふふ、ええ。若い子のエキス、たっぷり補給しちゃうわね♪」


 百合コミック誌の編集をしてる常連のお姉さんである。

 オトナらしく濃密でねっとりとした百合キスで、美緒奈エキスすなわち唾液をじゅぷじゅぷ。

 美緒奈も、ロリな顔に快感の色。


「ふぁ、んにゃぁ♪ オトナのテク、いいよぉ♪」

「……うん、いつも通りのうちのお店ね」


 由理ゆーり、もう慣れた。

 あっちのテーブル、こっちのテーブルで、百合キスちゅぱちゅぱ音と甘い喘ぎ声が上がる店内。

 ふーぞくみたいだけど、ここはそういうお店なのだ。


「でもやっぱり……」


 空いたテーブルを拭きながら、店内を見回して由理、


「常連さん、来てないね。ほら、いつもリズさんを指名する……」


 アイスコーヒーを給仕しながら季紗きさが相槌。


「ああ、あの、おっぱいの人?」


 リズの高校のクラスメートで、よく胸を揉みに来る常連乙女……後條ごじょうという女の子が、今日はいない。

 由理、弱気に。


(やっぱりリズさんの胸がないと、お客さん減っちゃうのかな? リズさんのおっぱいは、偉大なんだね……)


「考え過ぎだよ、由理。おっぱい好きの人、昨日は来てたし。早乙女さんの胸揉んで、満足して帰ったわ」


 非常勤メイドの早乙女早百合は、「リトル・ガーデン」巨乳ナンバー2を誇る、黒髪の和風美少女。

 ちなみに季紗がバストサイズナンバー3だ。

 その胸をメイド服越しにぷるんと揺らして、


「リズさんいなくて不安なのも分かるけど。その分私達が、がんばってお客様をもてなしましょう? リズさんの分も、いっぱい、いっぱい百合キスしなくちゃ!」


 おかしな発言ではない。百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」は、コーヒーに紅茶や様々な料理を、百合キス口移しで提供するお店なのだから。


「はぁ……はぁ……♪ リズさんの替わりに、2人分女の子とちゅーしないと。大変だぁ♪」

「そう言いつつ、嬉しそうね季紗……」


 季紗は真面目だから勤労意欲に燃えているのであって、発情してるわけではない……と信じてあげたい。


 と、そこへなぜか慌てた様子で。


「た、大変です先輩っ!」


 栗色ショート髪の後輩メイド……宮野りりなが駆け寄ってくる。

 由理たちの前に来ると、お店の入り口側を指さして。


「は、初めてご来店のお嬢様来ちゃいましたっ。し、しかも、ファーストキス捧げたいって!?」

「ええっ!? リズさんいない時なのに!?」


 なぜか大げさに驚いてる季紗。宮野さんもずいぶん焦った様子。

 由理が入口に目を向けると。


 そこで、先輩に恋の告白するような羞じらい表情で、もじもじしているのは。

 夏休み中の部活帰りだろうか、近くの中学校の制服を着た女の子だった。


 美緒奈ほどではないけど小柄で、丁寧に切り揃えられた黒髪が文学少女といった雰囲気の、可憐な乙女。


(可愛い子だけど……うちに来るってことは、やっぱり、そういう趣味なんだよね……)


 たぶん中学生だろうにファースト百合キス捧げたいとか、人生踏み外すの早くない?と憐憫れんびんの視線を送る由理。

 そのお客の女の子と、目が合った。


「あ、あのっ。ここでなら、お姉さま達にキスしてもらえると聞いてっ。私、女の子同士のキスに憧れてるんです!」


 初々しい羞恥に顔を赤くしながら、大胆発言。


「私の『初めて』……受け取ってください、お姉さまぁ!!」

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