胸を大きくする牛乳の飲み方(リズさん調べ)。

 朝の百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。

 平日の今日は、住み込みの由理ゆーり、リズも学校がある。


 それぞれ女子高の制服に着替えて、リズが作った朝ごはん。

 焼いたトーストにバターを乗せて、あとはカリカリベーコンエッグと、牛乳を掛けたシリアル。

 由理が美緒奈みおなに作り方を教えた瓶サラダも、食卓に彩りを添えている。


「リズさん、牛乳好きですねー」


 これでコップ3杯目。

 こくこく喉を動かして牛乳を飲むリズへ、由理が聞く。


 視線はつい、制服がはち切れそうな、金髪美少女の胸部へ。


「だからか……」

「何が!?」


 胸を隠して赤くなるリズ。縦ロールが揺れる。

 ミルクたぷたぷの、柔らかそうな乳も。

 ぷるるんっ、と。


「ああ、でもそうね。お母様から、『胸を大きくする牛乳の飲み方』は教わったけど。由理ちゃん、知りたい?」

「ぜひお願いしますお姉さま!!」


 すっごく食いついた!

 宝石の山を見つけた海賊のように瞳をキラキラさせて、由理は椅子から立ち上がる。


 お姉さまと呼ばれてちょっと嬉しそうなリズも、椅子から立って。

 こほんと咳払い、解説開始。


 ガラスのコップに、白い濃厚牛乳をとぷとぷ注ぐ。


「えー、まずは女の子が2人必要です」

「あ、もういいです。だいたい分かりました」


 由理、遠い眼でリズを止める。


「早いよ由理ちゃん!? 私まだ何も説明してない!?」

「いや分かりましたし! どうせ……」


 女の子2人必要という時点で、推して知るべし!

 由理は頬を染めて、


「どうせ、『口移しで牛乳を飲む!』とかでしょ? 結局キスか。百合キスか!」


 やはり図星。もちろん図星。

 リズが驚いて後ずさり。


「な、なんで知ってるの? も、もしかして日本では有名な方法なのかしら?」

「そんなわけあるか!? てかリズさん、キスしたいだけでしょ」


 じー、と睨んでやる由理に、リズは早口で一気に訴えかける。必死だ!


「違うわ。お母様言ってたもの、『これは科学的にも根拠が有るのよ! 百合キスしながら牛乳飲むとドキドキすることで血行が良くなり、牛乳の中の、胸の成長に有効な成分が体内を回りやすくなるんだから! 本当よ!』って。お母様、私より胸大きいし、絶対間違いないっ!」


 かなり必死。

 本気で信じていることがうかがえる。


「……リズさん、そんなの信じて、母娘でキスしてたんですか」


 由理、ちょっぴり妄想してしまい羞じらう。

 自分も母親は大好きだったが、キスはちょっと。さすがにしない。


「お母様、日本に留学中に教わったって言ってたけど。からかわれたのかしら?」


 やっぱり信じたい様子で、リズは考え込む。

 由理、あきれ顔で、


「ひどい人もいるものですね。誰だそんなの教えたのは」


 ちなみにリズも知らないが、リズの母ノラにこの牛乳の飲み方を教えたのは。

 彼女の同級生だった結城ゆうき薫子かおるこという少女である。


「まったく、顔が見てみたいわ。外人さんに、そんなえっちな冗談信じさせるなんてっ」


 由理は腕を組むのだった。


 ……それはさておき。


 リズ、頬を林檎のように染め、牛乳のコップを手に。

 ちらちらと、可愛らしい上目遣いで、


「……それはそうと。キスは、したいな♪」


 キスしたいアピール。

 結局胸が大きくなろうがなるまいが、百合キスはしたいらしい。


「ねえ、由理ちゃん。牛乳、口移ししよ♪ お母様の言ったのが本当か、試してみましょうよ?」

「や、やっぱりキスしたいだけでしょ……」


 朝からハートマークをいっぱい飛ばされて、たじたじになる由理だけど。


「し、仕方ないなー。あんまり疑ったらリズさん可哀想だから、だまされてあげますっ」


 そして……牛乳、口移し。

 甘く濃厚な白いミルクが、唾液の蜜と混じって。

 合体したピンクの舌と唇を伝い、由理とリズの腔内をじゅぷじゅぷ循環。


「はぅぅん♪ ぐぷ、ぢゅぷぷずぶぅ、ごぷぅ♪ 牛乳、甘いわね由理ちゃん♪」

「はぃぃ、濃くて、美味し、んぷぅ♪」


 まだ朝の内から。

 制服姿で激しく抱き合い、お互いの吐息がとろとろミルクの薫りでいっぱいになるまで、舌を絡めあって。

 胸は大きくなるか分からないけど、健康には良い気がする。

 そんな、登校前、朝の百合キス。


「ちゅぅ、ぬぷぅ、ごくん♪ リズさん、牛乳って……こんなに美味しいんですね♪」


 由理さんは、何かに目覚めそうなのでした。

 ……朝だけに。

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