美緒奈さまお泊まり編⑤ 初めての共同作業?

「それってカニカマ? 超簡単じゃん」


 「リトル・ガーデン」にお泊りの美緒奈みおな、キッチンにて。

 由理ゆーりから、瓶詰めサラダの作り方を教わる。


 カニカマを手でちぎり、ほぐしながら由理、


「そ。これくらいなら、あんたでも出来るでしょ。あと好きな野菜切って、ドレッシングと一緒に瓶詰めして、味を染み込ませるだけよ」

「や、野菜斬るだってぇ!? ……そんな達人技を、あたしにやれと?」


 美緒奈逃げ腰。

 キッチンでもゴスロリドレスなあたり、やる気まったく無し。


「達人技て。あんた包丁も握ったこと無いわけ?」


 呆れる由理へ、美緒奈はあざとく舌を出して。


「てへ、包丁は、ヤンデレ専用武器としか思ってないです♪」

「美緒奈……ダメな子」


 由理の眼から、涙がほろり。

 美緒奈への視線が、なんだか、とても可哀想なモノを見るそれだ。


「やっぱり、私が教えてあげないとダメか……」


 というわけで、由理の料理レッスン開始。

 まずは初級編で、キャベツを細かく切ってみる。


「ほら。ちゃんと包丁握って」


 背中から、美緒奈を抱き締めるような格好で、手を重ねて。


「……あ」


 背中に由理の胸が密着……その温もりに、美緒奈の心臓がとくん。

 徐々に赤くなる頬を、由理に気付かれないのが救い。


 わざと冗談めかして、


「い、いいってば料理なんて。あたしは、その……由理に養ってもらうから、さ」

「ばか。少しくらい出来ないと、もったいないわよ? 美緒奈は、可愛いんだから」


 さらっと言われて、ぼぼぼと美緒奈の顔が急沸騰。

 背中越しで、本当に良かった。

 こんな照れた顔、由理に見られたら……。


 伝わる由理の体温、匂い。

 耳元にそっと吹き掛けられる、穏やかな息遣い。


(しゅ、集中できねー……!?)


 で、やっぱりこうなった。


「痛ぁっ!? 指切ったぁー!」


 左手の人差し指の先から、血の玉がぷくり。

 うわーんと泣き出す美緒奈へ、その指を手に取り、由理は。


「見せてみて。……なんだ、大げさだっての」


 安心したように、ほっと息をついて。

 そして、美緒奈の指を……。


「……あむ」


 唇に含んだ。


「ちゅぷ。ずぶ……ずぷぷ。ふむぅ、ぷじゅるぅ……」

「……」


 じゅぽ、じゅぽと水音立てて。

 由理の桜色の唇を、自分の指が出し挿れするのを見て。

 美緒奈の胸が妖しく疼き出す。


(な、なんか……エロ本で見た、アレみたい)


 奉仕するように、指を舌で愛撫されて。

 切り傷が、痛みとは違う熱を帯びるのを感じて、もじもじしてしまう。


 変な気分が半分。

 もう半分は、


「……ねえ、由理」


 やっぱり優しいなって。


「顔が、えっちい」

「あんたねぇ……」


 ぷは、と唇離して、睨んでくる由理。

 美緒奈は、唾液で光る指で、自分の唇をなぞり、濡らしながら。


 潤んだ瞳で見上げて、


「ねえ……やっぱり由理が、あたしを養ってよ……」


 背を伸ばして、キスをした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る