ももいろお風呂祭り その4 リズ・ノースフィールド

 揺れている。

 白に近い肌色で、ぷるぷると弾力がありながら、重量感とボリュームを感じさせる物体が。

 シャワーから降り注ぐお湯の飛礫つぶてを跳ね返す、二つの果実。

 北の大地に産まれた金髪の少女の、それは……。


「も、もうっ。由理ゆーりちゃんまで、私の胸を……」


 流れるシャワーと、ほかほかの湯気に包まれて。

 金髪巨乳メイド、リズはたわわなそれを両腕で隠し、羞恥に肩を震わせていた。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」に住み込みで働く2人、由理とリズ。

 つい先ほどまで、2人お風呂の中で、裸で百合キスをしていたところだ。

 リズのぷにぷにバストの感触に理性を失いかけた由理だったが、「こ、こんなの私じゃないっ!?」と我に返り、裸のままお風呂から逃げ出した。


「皆、私の胸を揉むんですもの……。恥ずかしいわ」


 仕方ない。ノンケを強調する由理でさえ、抗えないのだから。

 季紗きさ美緒奈みおなも、リズの通うお嬢様学校の友人たちも……皆、揉む。

 大きくて、柔らかくて、適度な張りがあって。揉みたくなってしまうのを、責めてはいけない。


「私は、キスの方が好きなんだけどな……」


 シャワーに打たれたままピンクの唇を、白い指で物欲しげに、なぞる。

 猛烈な色香を放つ仕草ながら、その瞳は、表情は、母親に甘える小さな女の子のそれで……愛くるしい。

 リズ=ノースフィールド。英国北部出身の18歳。

 4人の百合メイドの中で、一番身長も高いお姉さん。

 普段はチョココロネのように、金髪をくるくる縦ロール。ほどけばお尻の辺りまで届く、ふわふわウエーブだ。

 髪と同じ金色の睫毛まつげの下には、曇りない青空色の瞳。澄み渡った無窮のスカイブルー。

 その青は、無邪気にきらきら輝いていて、童顔と相まってどこか幼い印象を、見る者へ与える。

 文句無しに、美少女だ。華やかかつ艶やかに、ゴージャスな光を纏って見えるのは、髪の毛が金色だからだけではないだろう。

 由理を明るい向日葵ひまわり、季紗を清楚でたおやかなスミレ竜胆リンドウ、美緒奈を愛らしいチューリップと例えるなら……リズは大輪の薔薇。女王のヴィクトリアンローズ。

 でもやっぱり強烈に存在感を発揮するのは……!


「肩は凝るし、サイズ合う服は無いし、大変なのだけど……」


 お胸様。ご本人は不満なようだけど、思わず拝みたくなる、聖なる双丘。

 洋服を脱ぎ捨て、窮屈なブラジャーから解放された女神の乳は、まさに自由の、抑圧からの解放の象徴……。

 それを揺らしながらシャワーを止めて、お風呂の腰掛けに座る。

 石鹸を泡立て、まず洗うのも、その乳。乳房の下に汗が溜まるので、そこから洗い始めるのだ。

 ぷに、ぷに。ぷるるんっ。

 指で触れる度に、石鹸の泡を弾き飛ばす見事な弾力性。


「んっ……。やだ、さっき由理ちゃんに揉まれた感触が……っ」


 胸が敏感らしい。頬に朱色を差して、切ない声を唇から漏らす。

 下乳に石鹸を塗ったら、次は手で包み込むみたいに横から胸をほぐす。

 波打つ肌色。人類を惹きつけてやまない、魅惑の谷間。


「ふぁ、んくっ……♪」


 洗う指は、膨らみの先の小さな突起へ。幼児の頬のように綺麗なピンクの、汚れなき先端へ。

 季紗達猛者もさには「授乳プレイ」と称して吸われたコトまである。

 その感覚を思い出し羞じらいながら、


「皆、どうしてそんなにおっぱい好きなのかしら?」


 巨乳に産まれたがゆえに、巨乳の価値を理解できない哀れなリズ……!

 はたして、いつかは気付くだろうか。

 そのふわふわが、「リトル・ガーデン」の宝であることに。世界の希望であることに……!


 でも、彼女自身は。 


「……私は」


 シャワーで裸体を洗い流しながら、つぶやいた。


「美緒奈ちゃんみたいに、ちっちゃく可愛い子に、産まれたかったな……」


 ……コンプレックス。金髪巨乳美少女リズの裸のココロは、甘えん坊で泣き虫な、小さなお姫様のまま。

 抱き締められるのを、待ち続けている。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る