ももいろお風呂祭り その3 南原美緒奈

 南原みなはら美緒奈みおな、16歳の高校1年生。

 マンション12階の自宅の中、深夜のお風呂で、彼女は全裸だ。

 お風呂ではまず頭を洗う派の美緒奈、ツインテールを解いた赤毛の髪を、シャンプーで流す真っ最中。

 小学生サイズの幼い……それゆえに季紗やリズとは別種の色香を放つ裸体が、まぶしい。

 赤毛にツリ目、にぱっと笑えば八重歯が可愛い、ロリメイド美緒奈。

 彼女は今、慌てていた。


「ああっ、もう! 深夜アニメ始まっちゃうじゃんさぁ!」


 急いでシャワーを浴びれば、つるぺた絶壁を白い液体シャンプーが流れ落ちる。

 細い手足と小さなお尻ににじんだ汗……神聖なロリータボディを、白濁した液体(シャンプーです)が清めていく、浄化の光景……という名のシャワーシーン。


「むー、コンディショナーとかめんどいなー。アニメ予約忘れたし、お風呂さっさと済ませちゃおっかな」


 髪の毛をくるくる指でいじりながら、思案中。

 なのだが。

 脳裏になぜか、先日の秋葉原デートでの、由理ゆーりの言葉が。


(美緒奈は、可愛いよ)


「ふにゃぁぁっ!? なんで由理の顔が浮かぶのさぁぁーっ!?」


 熟れたトマトの色に頬が染まる! いきなり顔面沸騰、ドキがムネムネ大暴走スタンピード。

 ロリな腋、ロリなちっぱい、ロリなお腹をごしごし洗いながら、ツンデレ少女のテンプレート的台詞を吐いた。


「べ、別にっ、由理に可愛いって思われたいとかじゃねーけど!?」


 脂肪率低めでもぷにぷに柔らかい天使エンジェルボディを、くまなくすみずみまで綺麗に。

 朱の差した夕焼けほっぺが、熱い。


「あたしも女子高生だし? この美貌を磨いてやるのは、可愛い美緒奈様の義務だよねっ」


 アニメは後で動画の配信を見よう。

 リアルタイム視聴よりお風呂を優先した美緒奈、口の中でごにょごにょ。


「由理なんてどーでもいいけど。ま、まぁ、不潔とか思われんのも嫌だもんな。ホント、別に、由理のことなんて……!?」


 ぷっくりした唇からプリティ八重歯を覗かせて、デレデレ顔の自分に気付いて。

 ……あたし、どうしちゃったのかな。

 初めての胸の疼きに、戸惑うのだった。


「やだ……こんなの、知らないっ……」


 秋葉原に一緒に行って、「可愛い」とか「好き」とか言われてから。

 由理のコトを考えると、なぜか美緒奈の小さな胸は、甘く締め付けられて……。

 未知の感情? いいえ、本当は色々なアニメで、見たこと有る。

 ドキドキ甘酸っぱくて、切ない……初こ


「うにゃぁぁぁぁぁあたしのバカバカバカ! は、初恋とかそんなわけねーから!?」


 高層マンション12階のシャワールームに、胸きゅん乙女の絶叫が響く。

 近所迷惑!


「ちょっと美緒奈! またお隣さんに怒られるじゃない!?」


 美緒奈ママが浴室の外から叱るけど。

 娘の頭は妄想トリップ中!


 〈以下妄想〉

 裸の由理が、ベッドの上で同じく下着も脱いだ美緒奈を抱いて、頬擦りして。

 ……はだいろ、密着。


『ふふ、美緒奈ったら。心臓、すっごくドキドキさせちゃって、可愛いじゃない♪』

『ゆ、由理のばかっ! あたし、ときめいてなんかないっ……』

『強がっちゃって。嘘吐きさんね、美緒奈は。でも……ふふっ』


 くちゅぅっ。


『……こっちのお口は、正直みたいだけど?』

『あ、ひゃぁんっ♪ そこは、だめ、お姉さまっ……♪』


 これ以上は危険だ!!


「ふぎゃぁ!? あたしってば何を季紗きさねえみたいな妄想をぉぉぉぉ!?」


 お風呂のタイルの上、全裸でごろんごろん悶え転げるロリータ美少女の図。

 かなりうるさいので、パジャマ姿のママが怒って、ガチャリとドアを開ける。


「静かにしてよもうっ! コスプレ衣装作ってあげないわよ!」


 ちなみに美緒奈ママは絶賛アラフォーだが、容姿は娘に負けず劣らずロリータ。

 夫婦でいると、パパはよく警官に職務質問される。「ち、違います! 犯罪じゃないです合法です!?」が美緒奈パパの口癖だ。

 そんなロリ熟女の美緒奈ママ、愛娘がお風呂でぺたんと座り込み、眼に涙をにじませるのを見て。


「……あら、恋する乙女の顔♪」


 実の娘に、萌えてしまった様子だ。

 その頭の中には、娘に着せる新作コスプレ衣装のアイデアが、次々と湧き上がってるであろうことは、きらきら輝く瞳を見れば、想像にかたくない。


「うー……」


 タオルで前を隠すのも忘れ、裸の美緒奈。

 開いたドアから浴室に流れ込む涼しい風に、オーバーヒートな脳と肌とをどうにかクールダウンされながら。


(胸、苦しいままだ。なんで美緒奈様が、こんなわけわかんねー思いをっ……)


 この感情の正体を知るためにも。

 明日も由理にキスしてみようと、控えめな胸に誓うのだった。

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