ねこみみモード♪という歌が、昔ありまして……。

 白とピンクの内装が可愛らしい、百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」。

 乙女の聖域であるこのお店では、来店するお嬢様たちに喜んでもらえるよう、美少女メイド達が日夜斬新な百合企画を出し合っている。


「みゃぁん♪ お嬢様ぁ、美緒奈みおなのコト可愛がってにゃん?」


 いつものヘッドドレスに替えて、猫耳カチューシャを付けた赤毛ツインテールのロリメイド、美緒奈。

 八重歯をのぞかせ、うにゃぁん♪と甘える子猫のポーズ!


「あざとい! さすが美緒奈ちゃんあざといよ! これで今年の猫耳週間も盛り上がるね♪」


 ふすふす鼻息も荒く興奮する季紗きさ

 由理ゆーりも赤くなりながら、ちらちら見て。


「ま、まぁ可愛いのは認めるけど」


 よく恥ずかしくないわね……と憎まれ口。

 あと猫耳週間って何だよ……とツッコむけど、誰も答えない。

 そんな由理へ、美緒奈は可愛らしく怒ったふりで、顔を近付ける。


「むー。そんなこと言うお姉さまには、噛みついちゃうにゃ」


 もちろん唇に……だけど寸前で、由理に手で頭を抑えられ、ガードされた。


「もうっ、お姉さま? 私のしもべなんだから、ちゃんとキスされなさい?」


 私のしもべ、にキュートな萌えボイスのエコーが掛かる。

 ツインテールがぴょこんと跳ね、八重歯がちらり、かなりの破壊力だ。


「うらやましいわ、美緒奈ちゃんはそういうの似合って」


 頬杖ついて、ちょっぴりねたように唇を尖らせるのは、リズ。

 試しに、金髪縦ロールの頭に猫耳カチューシャを被ってみれば。

 たったそれだけの衝撃でぷるるんっと揺れる乳に、季紗が万歳しながら、


「牛さんが猫耳……♪」

「去年の猫耳週間も、それ言ったわよね季紗ちゃん……」


 猫耳よりホルスタインのコスプレをさせたくなる巨乳を隠して、リズは赤面。

 そっとカチューシャを外した。

 そして猫耳週間は毎年やっているらしい。


「ほら、由理も付けて? 絶対、絶っ対、似合うから♪」


 瞳を期待にキラキラ輝かす季紗、彼女の差し出す猫耳カチューシャを、由理は仕方なく受け取って。

 装着。

 ふぉぉ、と感嘆する3人に、照れた顔で腕組みしながら。


「ふ、ふんっ。こんなので騒いじゃって、バカみたい、にゃん?」

究極萌え生命体アルティメット・スイングツンデレ猫耳メイド様の誕生だぁぁーッ!?」


 今度は美緒奈が万歳した。

 季紗とリズの視線を集め、あ、あたしの方が可愛いけどな?とか慌てて言ってみる。

 こちらも中々のツンデレだ。


「これ……すごく恥ずかしいんですけど」


 頭の上の猫耳を指さし、頬を染める由理。

 正直取りたいけど、その前に、逆ギレ気味に。


「ほら、後は季紗だけだからね。早く付けてよっ」


 皆で猫耳付ければ恥ずかしくない理論である。

 しかし喜んで被るかと思いきや、季紗は自分の分の猫耳カチューシャを手に、ためらいを見せた。


「いいのかな……私、自分ではネコよりタチだと思うんだけど」

「……なんだって?」


 発言の意味すら分からないノンケの由理が聞き返すけど。

 リズと美緒奈は、「ああ、なるほど……」と納得した様子。


「あ、ネコとタチっていうのはレズ用語でね?」

「いらないその解説いらない!? どーせエッチな話でしょ!?」


 にこっと天使の笑顔で説明しようとする季紗へ、由理は耳を塞ぐのだった。

 でも残念、その羞じらい顔は、逆効果。季紗の中の狼さんをがおーさせてしまうのだッ!

 意地でも説明するっ、この唇で! と季紗、猫耳装着!


「ネコだけどタチ! ネコだけどタチ♪」


 猫は猫でもオオヤマネコか雌ライオンの勢いで、季紗は由理へと襲い掛かった!

 ここで説明すると、ネコとは女性同士のえっちにおいて色々される側。タチとはする側を指す。

 高校入試にも出るから、覚えておいて損は無い。


「ふにゃぁぁ!? ちゅぷぅ……うみゅぅぅ。季紗、そんな激しく、だめぇ、にゃぁっ」

「ふふ、えっちな子猫ちゃんには、しつけしてあげないとね。ちゅぅぅ……っ♪」


 こうして今日も「リトル・ガーデン」は、ゆりゆり子猫達がラブラブちゅっちゅする、愛の花園と化したのでした。

 猫耳が一番似合う美緒奈、唇に指で触れて。

 熱っぽく由理を見つめながら、


「キス……したくなっちゃった……」

「いやもうお腹いっぱいです」

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