桜Yurikiss  ~花より百合キス~

 穏やかな春風に舞う、桜の花吹雪。

 今日の百合メイド4人は郊外の花見名所へ、「百合色サンドバスケット」の出張販売に来ていた。

 普段は店内で百合な女性にしか販売しない「リトル・ガーデン」の料理。

 それを、今回特別に、男性にも販売。かなりの量を用意したが、昼過ぎには無事完売した。


「ふふ、せっかくだから帰る前に、私達もお花見しましょうか」


 元からそのつもりだったのだろう。

 桜の樹の下にビニールシートを広げ、自分達の分のサンドイッチを置き、リズが微笑む。

 ステンレスボトルに入れておいた熱い緑茶を紙コップに注ぎ、正座して薫りを堪能。


「私ね、日本の桜に憧れてたのよ。可憐ではかなくて、とても素敵よね」


 ひらひら舞い落ちる淡いピンクの花弁はなびらに、うっとりと見惚れる金髪巨乳メイド、リズ。

 そんな英国美少女へ、清純系お嬢様メイド季紗きさが、やまとナデシコ代表として、


「でも私は、桜より百合ですっ♪」

「それ植物の話!?」


 上品な所作でお茶をすすりつつの季紗の発言へ、由理ゆーり、飲み掛けたお茶を噴く。


「あたしも百合派だなー。やっぱ花より百合だよね♪」


 頬を抑え、ぽっと赤くなる美緒奈みおなに、リズも、照れ照れと可憐な乙女の仕草で、


「そ、それを言ったら私だって……百合が良いわ。日本に来て、百合に出会えてとっても幸せ♪」

「だから植物の話ですよね? ね!?」


 植物の話と信じたい由理だけど、たぶん違う。

 そこへ季紗、ハート型のサンドイッチを口に含んで、


「というわけで由理、口移ししよっか♪」

「野球しようぜくらいの軽いノリで!?」


 桜の下でも、ここだけは百合の花園。もちろん逃げられない。

 甘いスモモの薫りがする季紗に、熱く抱き付かれて……。


「ちゅぷ……る、ぅっ……」

「んむぅ、ふ、んんっ……っ!?」


 唾液の蜜でドロドロに溶けたサンドイッチを、舌の上、喉の奥へと唇越しに押し付けられ、ごっくん。

 ツナとレタスのサンドイッチに、季紗のエキスをトッピングして、濃厚キスの口移しです。


「ふふ、お腹空いてるでしょ? もっと私の……吸っていいよ?」


 正座のまま抱き合って、唇を離せば、舌と舌の間に垂れる細い銀の橋。

 ドキドキしちゃう由理だが、困ったことにサンドイッチは美味しいのだ。


「ううっ、もっと欲しくなっちゃう……!?」


 色々目覚めそうな由理の反応に、顔を赤らめながら見守っていたリズもサンドイッチをくわえ、


「ねえ、由理ちゃん。私もお腹空いてるの。交換、しよ♪」


 桜舞う下、羞はじらいながら誘うリズに、由理胸きゅん。


「や、やっぱり口移しで……?」


 もちろんである。

 今度は由理もサンドイッチを口に含んだ。

 シートの上で、リズを押し倒すような姿勢で、


「……ちゅぅぅ、ん、むぅ」


 リズのツナサンドと、由理のローストビーフサンド。

 口腔内で蕩けて甘い唾液と混ざり、ぐちゃぐちゃになったそれを、舌を絡めて取り替えっこ。

 ずっぷ、ぐちゅぅ。ぬるぬる。

 水音が大きくなるにつれ、由理のカラダの下、メイド服越しでもリズの豊かな胸の奥、鼓動が激しくなるのを感じる。

 体温が、まだ少し寒い春の空気に心地よくて、由理もつい狼さん化。


「はぅ、ふ……ぅん。リズさんの、美味しい、ですっ」

「や、ああ、っん。私……溶けちゃ、うっ♪」


 サンドイッチを2人で食べているだけ! というには無理があるかもしれない。

 背中に桜の花弁が落ちてくるのも構わず、キスに夢中な2人。

 その姿へ、


「うわ、なんだか由理も情熱的だね。春の陽気のせいかな! かな!?」


 嬉しそうにキャー♪と歓声を上げる季紗。

 美緒奈の方はといえば、なぜかむっとして、


「……長すぎぃ。由理ってば、季紗姉との時より長くない?」


 生クリームと苺のデザートサンドを口に含み、由理がリズから唇を離したところを狙う!


「ちゅ……」

「ふぁ、美緒奈っ……!?」


 赤毛ツインテールのロリメイド美緒奈、恥ずかしそうにたどたどしく、でも由理を押し倒してキス。

 今度は甘い甘い、クリームの口移しです。


「んく、んむっ……。み、美緒奈様がキスしてやるんだから。短い時間で満足なんて、するなよなっ。ちゅ……ふぅ……ん」

「ちょ、待ってぇ……っ。クリームと唾で、もうベトベトぉっ♪」


 4人とも、ちっとも桜見てないし。

 美緒奈から由理への情熱的なキスに、季紗とリズも胸のドキドキが止まらなくなった模様。ぎゅっと抱擁し合って、ちゅっちゅ始めた。


「ん……くっ。む……ふぅ♪」

「き、季紗ちゃんっ……、もう、サンドイッチ無いわよ?」


 でもキスは止まりません。そのまま入れ代わり立ち代わり、4人、桜吹雪の中で。

 百合の花を、爛漫らんまんに咲かせた。

 季紗ご満悦。


「ふふ、やっぱり花は百合、だよね♪」

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