辛口カレーが甘くなる食べ方。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」は料理も評判。

 今日は暑い夏に向けて、元気の出る辛口カレーライスの試食中です。


「んー♪ リズねえあたしと結婚して。そして毎日あたしにこれ作って♪」


 赤毛のツインテールをぴょこぴょこ揺らしご満悦の、ロリメイド美緒奈みおな

 メニュー開発では、いつも試食役。


「かなり辛口にしたけど……平気なの美緒奈ちゃん?」


 「リトル・ガーデン」の料理長、金髪巨乳メイドのリズが心配そうにたずねる。

 美緒奈、んー、と考えて、


「あたし辛党だしな。でも、これくらい刺激あった方がいいと思うよ?」

「カレー食べた後キスするものね! どれくらい刺激が残ってるか確かめないと!」


 瞳を輝かせるのは、さらさらロングヘアーの美少女メイド季紗きさ

 早速自らの舌と唇で確かめる。


「んぷぅ。ん、ちゅぅ♪ ……甘いような、辛いような? もっとキスして確かめるね♪」

「ぐむぅ、ずちゅっ……るぷぅ♪ 季紗姉、激しっ……。もう、よっきゅー不満なんじゃねーの?」


 これはカレーの試食です。

 カレーの、試食です。


「ちゅむぅ、んんっ、くぅぅ……♪」


 これはカレーの試食……。

 女の子同士で唇を重ねて吸い合ってるけど試食……。


「……毎度のことだけどさ。いつ見ても百合キスしてるね皆」


 やってくるなり、顔を赤らめる由理ゆーり


「季紗と美緒奈、すっごくディープキスしてるし。見せつけ過ぎ」


 美緒奈がなぜか慌てる。


「ば、ばかっ。これは試食のお仕事なんだから! やましいコトなんてねーぞ!?」

「ちゅぅっ♪ 美緒奈ちゃんの唇スパイシー♪ 辛さのせいかしら、カラダが火照ってきちゃった」


 季紗はハァハァ興奮していた。

 リズが、お皿にカレーライスをよそって微笑む。


「ふふ、由理ちゃんも試食してみる? 今度お店に出す新作なのよ」

「ビーフカレーですか。お肉いっぱいで美味しそう♪」


 とろとろの肉汁がルーに溶け出た濃厚ビーフカレーのジューシーな薫り。

 夏でも元気が出る薫りを胸に吸い込むだけで、由理の口の中によだれがじゅるり。

 座ってスプーンを手に取り、カレーを口へ運ぶ。


「んー♪ リズさん私と結婚して。そして毎日私にこれ作って♪」


 落ちそうなほっぺを抑え、ご満悦な由理に、


「むー……。あたしと同じこと言ってるし」


 美緒奈が、面白くなさそうに頬を膨らませる。


「辛さはどう? 由理ちゃんは辛党でもなかったと思うけど」

「え? かなりピリピリしますけど……美味しいですよ、すっごく! 野菜の甘みのおかげかな、味に深みが有って、辛いけど食べやすいです」


 本当に毎日でも食べたい味。由理は褒めちぎるが、


「そう……じゃあ、辛さを倍にしないとね」


 なぜかリズ、残念そうにため息を吐いた。


「え? え? 美味しいって言ったのに、この反応は何?」

「食べやすくちゃダメなんだよ由理! それじゃ私とリズさんの目指す食べ方が出来ない!」


 季紗が主張。ヨーグルトドリンクの入ったコップを手に、解説する。

 リズと眼で頷き合って、


「これが私達の目指す、『リトル・ガーデン』流辛口カレーの正しい食べ方です!」


 ヨーグルトドリンクをリズに渡し、季紗はカレーをぱくり。

 スイーツ好きで甘党の季紗、演技でなく涙目。


「辛っ! 辛ぁぁぁぁぁーっ!? リ、リズさん、ドリンクをぉっ!?」

「はい、口移しですねお嬢様♪」


 こくこくヨーグルトドリンクを口に含み、リズは季紗へと……。


「ちゅぅぅぅ……♪」


 口づけを交わした。


「ずちゅぅ、ぐぷっ……。こくん、ごくごく……♪ ドリンク甘いです、リズさぁん♪」

「んぷ、ずりゅぅ……ちゅぷぷぅ♪ はぁっ、んくぅっ……。季紗ちゃんの唇も甘いわよ♪」


 唾液と一緒に、ヨーグルトドリンクをたっぷり口内循環。

 とろける濃厚接吻ベーゼが、カレーの刺激に痺れたお口を、優しく癒してくれる。


「ちゅぷ、ずぷ、ぬぷぷ……♪ これが、カレーの正しい食べ方です♪」

「す、すっげー! リズ姉も季紗姉も天才だよっ! これなら夏も自然に百合キス出来るね☆」


 尊敬の眼差しで2人を見上げる美緒奈。

 由理の感想はというと、


「……たまには口移しから離れたら?」


 普通に食べなよ、と由理は思うのだが。

 百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」の料理は全て、百合キス口移し前提のメニューなので、仕方ないのでした。

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