クリスマスの準備です!

 都内郊外の、お洒落な喫茶店「リトル・ガーデン」。

 美味しいケーキが評判のこのお店、クリスマスは毎年乙女達で大賑わいである。


 クリスマス直前の今夜、閉店後のお店では、今年の作戦会議が開かれるのだった。


「お疲れ様でーす」


 皿洗いなどを終え、新人のメイド店員、由理ゆーりが洗い場から出てくると。

 店内のテーブルでは。


「ちゅぅ、んっ、ふぅぅ、くぅ、ん……♪」


「な、なにいきなりキスしてるのぉぉぉぉぉっ!?」


 ガタガタッ、と机を倒して後ずさる由理!

 その目の前では先輩店員2人……高校2年生の清楚系お嬢様、季紗きさと、1年生のツインテール幼女系、美緒奈みおなが抱き合ってらぶらぶちゅっちゅの最中だった!!


「ちゅぱっ、くちゅる♪」


 かなりディープな濃厚接吻べーぜ。ノンケの由理には刺激が強い。


「ふふ、このお店では挨拶あいさつ代わりよ♪」


 頬に手を当て、にこにこと微笑むのは。レモン色の金髪縦ロールが眩しい巨乳メイド店員、リズ。

 高校3年生、この喫茶で働く4人のメイドで、一番の先輩格だ。


「こうして仕事前と、仕事後に、女の子同士でキスを交わすの。共に働く者として絆を深め合うため、何十年も前から続く伝統なのよ♪」


「なんて恐ろしい伝統……!!」


 由理は、後悔していた。時給千円、住み込みOKで家賃も必要なしという好条件に釣られた自分を、呪うしかない。


「も、もっと求人をちゃんと読んどけば……。普通のメイド喫茶と思ったのにぃぃぃ!?」


「ちゅ、うん、ちゅぅん……♪」


 目の前でちゅぱちゅぱ続けられる百合キスから、顔を真っ赤にして目を覆う由理。

 その頬を、リズの白い手が挟み込んで。


「さあ、私達も……♪」


「や、やりません! やりませんよ!?」


 近付くピンクの唇に、涙目であたふたする由理へ。

 口づけ中、というより唾液の交換中だった季紗と美緒奈が注意。


「む、だめだよ由理、キスくらい恥ずかしがってちゃ。慣れてきたら、私がもっとすごいコト教えるんだから!」


「も、もっとすごいコトって何!? 法的にセーフなの!?」


 清楚なロングの髪でお嬢様風な季紗、頭の中は常時蕩けたピンク色。


「へへー、リズ姉のキスを断るなんて百年早いぜ新人!」


 赤毛のツインテールロリ、美緒奈。猫を被った仕事中以外は、こんな口調である。


「あ、あんたねぇ。私の方が上級生なんだけど……?」


 拳を震わす由理。由理は、季紗と同じく高校2年生、美緒奈より一つ年上だ。


「上級生には、敬語使いなさいよね?」


「でもこの店じゃ、私の方が先輩だかんな。由理こそ、先輩には敬語使えよな♪」


 ロリ娘、美緒奈。小悪魔な笑顔は、純真妹系を演じている営業中とはまた違った魅力。


 一方、キス寸前の体勢で拒まれたリズは。


「……くすん。私とじゃ、嫌なの?」


 うるうると濡れた瞳で、至近距離。由理と見つめ合う。甘い、吐息が掛かる。

 金髪縦ロールで、青い眼。でも意外と童顔な愛らしい顔を近付けられて、由理の頬が燃える。


 ……はっきり言って、可愛い。リズは甘えん坊なお姉さんという感じで、庇護欲をそそるのである。

 メイド服越しでも伝わる、二つのマシュマロの柔らかくて暖かい感触も、破壊力抜群。


「えと、その……。い、嫌ってわけじゃ……」


 ごにょごにょ。口ごもって羞じらう由理に、リズはぱぁっと表情を輝かせる。……これまた可愛い。


「じゃぁ、キスしましょう……!?」


 とっても嬉しそうなリズのきらきら笑顔に、結局拒めない由理だった。


「う……。は、はい……」


 ……ちゅぅ♪

 指を絡ませ、甘い甘いキス。

 これが百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」従業員のたしなみである。

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