百合メイド喫茶へようこそ♪

百合宮 伯爵

お帰りなさいませ、お嬢様♪

 ここは都内某所、郊外の喫茶店。

 少女趣味全開、白とピンクで可愛らしい店内は、今日も乙女達で大賑わい。


 そして客を出迎えるのも、4人の少女。全員、メイド服着用だ。

 ロングスカートの黒のメイド服に、純白のエプロンドレスの正当スタイルが、流行の萌え系とは一線を画す高貴で清潔な印象。


 ここは萌え文化が人々に認知されるより前から続く、実に数十年の歴史を誇る由緒正しいメイド喫茶なのである。


 でも、特筆すべきはそこではなくて。


「ふふ、お嬢様? 今日も会いに来て下さって、リズは嬉しいですわ。ちゅっ♪」


 いきなり女の子同士でキスである! だがこの程度、この店ではおしぼりを出すような感覚の基本サービスだ!!


「だ、だって……お姉さまの良い匂いが、忘れられないんですもの」


「まぁ……お嬢様ったら可愛い♪ ぎゅってさせて下さいな」


 白いテーブル。頬を赤く染める少女客を豊かな胸で抱き締めるのは、金髪の少女。

 高校3年生、4人のメイドで一番の先輩格、リズ。丹念に巻かれたレモン色の縦ロールが眩しい、北欧系の美少女である。


「ああ、お姉さま、ふかふか……♪」


「も、もうっ、お嬢様! そんなに揉まれては、リズ、恥ずかしいですわ!」


 少女客は、リズの豊かな胸に夢中。Gカップ、たゆんたゆん。素晴らしい揉み心地!

 その魔性の柔らかさ、同性といえど一度味わえば忘れられるモノではない。

 ああ、ぷにぷに。母性の象徴。


 ※ ※ ※


 そして、他のテーブルでは。


「えへへ、お嬢様。美緒奈みおな、がんばってお紅茶煎れたよ! えらい?」


「うんうん、美緒奈ちゃん偉い偉い! ご褒美にほっぺたチューしてあげる♪」


 こちらは逆に、客にキスされているメイド。


「えへへー♪」


 OLのお姉さんにキスされてにぱっと笑うロリっ娘。恐ろしく可愛い生き物である。

 無邪気な笑顔、赤毛でツインテールの幼いメイドは、美緒奈。高校一年生だが、見た目は小学生にしか見えないロリ天使なのだ。


「ねえお嬢様、新作のパンケーキもいかが? 熱々だけど、美緒奈がんばって、ふーふーするよ♪」


「美緒奈ちゃんのふーふー!? きゃっ、ぜひお願い♪」


 狙い通りメロメロの客に、美緒奈、苺色の唇に一瞬にやりと黒い笑み。彼女、商売上手なのだった。


 ※ ※ ※


 さてさて、また他のテーブルでは。


「お嬢様……ケーキ、季紗きさの口移しでいかがですか……?」


 桃色の唇にクリーム付けて、なにやら大胆な行為をしているメイド。

 明るい髪色のロングヘアーに姫カットの清楚な美少女だが……?


「き、季紗お姉さま!? 口移しは、恥ずかしいです……っ」


 いくらなんでもなサービスに、顔真っ赤の少女客。

 でもロングヘアーの美少女メイド、高校2年の季紗。瞳を熱っぽく潤ませて。


「だめですか? 私、お嬢様に舌れたいです……」


 そう、4人の中でも見た目は一番正統派美少女、それこそお嬢様なルックスの季紗。

 清楚な容姿に反して、頭の中は桃色おピンクな変態さんなのだ。変態淑女なのだ……!


 唇からえっちに零れる唾液とクリーム。それを、ああ、何というコトか! 少女客の鼻先に顔を近付け、そのまま!?


「……ちゅぅぅぅっ♪」


 この喫茶店の、看板娘である。


 ※ ※ ※


 そして、最後に。


「ど、どどどどどどうぞ、おおお嬢様? お、お帰りなさいのキスを……っ!?」


 この喫茶に来店した乙女へ、漏れなく振舞われる基本サービス。

 メイドによる、お帰りなさいのキス。そんな基本事項にすら林檎のように赤面、動揺しているのは。


「あ、あの、新人さん? そんなに照れられると、私も恥ずかしくなってくるのですが……」


「ご、ごめんなさい……っ!?」


 女子大生の客に、キス寸前まで顔を近付けたまま。真っ赤になって泣きそうな瞳で謝るのは。

 時給に釣られて先日メイドになったばかりの新人……高校2年の由理ゆーり

 セミロングでぱっちりした瞳の、活発そうな美少女。ノンケである。ノンケなのだ……!


「わ、わわ私……! ふーぞくで働くの初めてなもので!?」


 口づけ直前で頭から蒸気を噴き出す由理へ。


 こほん、と先輩メイド店員、リズが咳払い。ちょっと赤くなっている。


「ふーぞくじゃありません。乙女の聖域ですっ!」


 そう、ここは。男子禁制、女性を愛する女性だけが入店できる、可憐なる乙女の楽園アルカディア。百合メイド喫茶「リトル・ガーデン」なのである。やましい店ではない!!


 これは、とっても清らかでピュアなお店である「リトル・ガーデン」に集った可憐なる4人の乙女の、愛と、友情と、キスと、キスと、キスの物語である……!!


「いやどう見てもふーぞくだからこれぇぇ!?」


 店内に、由理の叫びがこだました。

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