第27話 互いの意地
「フィア、あんたの聖剣食べられたらしいわね。あの悪魔から聞いたわ。世界を救い平和の象徴である聖剣が畏怖の対象である悪魔に食べられるなんて皮肉なものね」
「平和の為だ。あのお方はその事を恥じてはいない。クラウ・ソラス様、貴方も平和を願うのなら彼女に食べられてください」
でないと悪魔に対抗できるフォースがなくなってしまう。それだけは避けなくてはいけない。
「何言ってるのよ! そんなの断るに決まってるでしょ」
「貴方に聞いてないわオランジェ」
聞いているのはその腰のレイピア。クラス・ソラスなのだから。
それに彼女と話しても水掛け論になるのはフィアも良く知っている。
『エクスカリバーは何と言っていた?』
「我々聖剣は人を護る存在であって私情で動いてはいけない。最前の行動をするべきだと」
使い手がいなくとも独断で動けるよう意思が与えられた聖剣にとっては酷だろうがそれが使命なのだ。平和の為に戦い、平和の為に朽ちるのが。
「だからって悪魔の手を借りるなんてありえないわ!」
『オランジェ、言葉を慎め。彼女も本意ではないだろう。しかし、エクスカリバーが自らの体を差し出したという事はその悪魔、信じるに足る存在なのだろう』
「では引き受けてくれるのですか?」
『いいや。ここは場が整えられているから丁度いい。まずは君たちの覚悟を確かめてからにさせてもらおう。そのつもりで呼んだのだろう?』
流石は聖剣。ジーニアの魔法陣に気づいていたらしい。だがあえて触れていなかったようでこちらの土俵に上がってくれるそうだ。
「はい。できれば穏便に済ませたかったのですが」
ほんの少しでも戦わなくて済むならばと思い、話してみたがやはりそう都合良くはいかないか。
『そうはいかない。これから君たちには様々な困難が降りかかるだろうからこんな事で立ち止まっていては困る。それでは平和の犠牲になった我が友が浮かばれぬ』
「ク、クラウ・ソラス様……」
『オランジェ、君は怒りに身を任せる節がある。それは自らの首を絞める行為だ。これからはもう少し頭を冷やせ』
「は、はい……」
『では始めよう。これが我にとって最後の戦いだ。悔いのないものにしてくれオランジェ』
「分かっています。やるからには勝ちます」
「負けない。私にも意地はある」
両者、鞘から剣を引き抜きその切っ先を相手に向けた。
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