第26話 二人の騎士

 準備は整った。

 王宮内にある訓練所にジーニアが魔法陣を展開して後は迎え撃つだけになったが本人が来なくて意味がない。

 そこはアドがどうにかすると言って姿をくらましたと思ったらものの数分で帰ってきた。

 しかも、その十分後にはオランジェらしき女性が訓練所へと姿を現したのだ。

「アドちゃん、一体何したの?」

「別に私はフィアが書いた果たし状を渡しただけだよ〜」

「果たし状って、そんな古典的な……」

 いや、一般的な移動手段が馬車のこの世界では普通なのか? とにかく、目当ての人物が来たのだからどちらでもいいが。

 オレンジ色の髪は短く整えられ、その慎ましやかな胸は動きやすさを考えての事だろう、っとなんかこっち睨んできた。俺はただ美少女が現れたから解説をしただけなのに。

「あんたが文をよこすなんて珍しいわね。しかも私と戦おうなんてどんな風の吹き回しかしら」

 俺たちは観覧席でその険悪な光景を眺めていたがその重たい空気はここまで伝わってきた。

「あれ? なんか怒っていらっしゃる? でもフィアと同じカチューシャしてるから仲良さそうに見えるんだけど」

「カチューシャ? もしかして魔具の事? あれは視界を狭めない為の防具で、魔法が施されてあるんだ。大量生産が難しく、団長クラスの人しか持っていない代物であって決して君が思っているような物ではありませんよソウスケくん」

 あれおしゃれアイテムじゃなかったんだ。もしかして男もあれを? それはちょっと想像したくない。

「そうかよ。それよりお前はどっちが勝ちと思う?」

「正直に言いますとオランジェさんですね。決してフィアさんが実力劣っているわけではないのですが聖剣がないかあるかでは天と地の差です。今回は愛用の魔剣を使うそうですがそれだけでは少々厳しいのではないかと思います」

「魔剣って大丈夫なのか? この世界の連中悪魔嫌ってんだろ」

 だからこそこの旅は難易度が高いのだが。

「魔法と同じですよ。使えるものは使う。それは魔法が施された剣であっても変わりません。ちなみに悪魔が使っている、もしくは使っていた剣は邪剣と呼ばれています」

 なんかややこしいな。でもそれだったら俺のアゾット剣はどっちなんだ?

「魔剣とか邪剣と関係ないよ~。フィアちゃんには秘策を授けてあるんだから~」

 また何かしたらしい。こういう時にああ、悪魔なんだな~と思い知らされるのだが本人はただ無邪気に見つめ合う二人の騎士を眺める。


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